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宗教とは何か? 20年の修行を積んだ禅僧が語る宗教と現世利益の関係

坐禅で「悟り」は開けない その一

普遍宗教と現世利益

 私が考える「宗教」とは、このような「現世利益」的テクノロジーではありません。私がテーマにするのは、ブッダやキリストやマホメッドが創始した教え、「普遍宗教」と言われるような思想と実践の体系です。

 彼ら3人、すなわちブッダやイエスやマホメッドは、その活動を開始したとき、貧困でも病気でも社会から孤立していたわけでも、老いに苦しんでいたわけでもありません。

 ブッダは釈迦族の国の「王子」として生まれ、「大変優しく育てられた」と述懐していたくらいです。

 イエスも「大工の息子」とされていますが、当時の「大工」は技術者として重宝されていたでしょうから、貧困に喘いでいたとも思えません。実際、聖書にそんな記述はありません。

 マホメッドにいたってはメッカの大商人の家の出身です。
すなわち、彼らがそれまでの生活を一変させたのは、現世利益とは無関係なのです。

『「悟り」は開けない』ベスト新書より構成〉

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南 直哉

みなみ じきさい











1958年、長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務。1984年、曹洞宗で出家得度、同年、永平寺に入山。以後、約20年の修行生活を送る。

2003年に下山。現在、福井県霊泉寺住職、青森県恐山菩提寺院代。著書に『語る禅僧』(ちくま文庫)、『老師と少年』(新潮文庫)、『恐山―死者のいる場所』(新潮新書)、『善の根拠』(講談社現代新書)、『刺さる言葉―「恐山あれこれ日記」抄』他。


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