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教育勅語が担ぎ上げられたのは、戦後民主主義に悪口を言いたいから!?

【教育勅語】を憲法学者・木村草太氏が徹底解説2/3

「今さら聞けない」ニュースのキーワードについて、「分からないことはなんでも聞いちゃう」いまドキの社会人、トオルくんとシズカちゃんが第一人者の先生たちに話を聞いていきます。
第一回まとめ~
・教育勅語は「大日本帝国のためによき臣民たれ」という文章であり、現在の日本国という国家では、内容の良し悪しの以前にすでに効力を失っている。
・学習指導要領には「大日本帝国の心得を教えよ」とは書かれていない。つまり、教育勅語を教科書として使うと学校教育法に反する指導となる。
・教育勅語の「大日本帝国のために」という内容は、日本国憲法の自由主義や民主主義の理念に反することになる。
→今さら聞けない「教育勅語」。憲法の先生の先生が教えてくれた内容以前の問題とは?

●教育勅語は戦後民主主義を攻撃する手段!?

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トオル…でも気になるのは、そんな前時代的なものが何で今さらフィーチャーされているかってこと。

シズカ…うん、特にいわゆる「愛国派」と呼ばれる人たちが大事にしているイメージがあるわ。

木村(木村草太:憲法学者、首都大学東京教授)…その理由を紐解くには、少し歴史を振り返る必要がありますね。歴史の授業で習ったと思いますが、戦後の日本は国家体制が大きく変革しました。自由主義と民主主義、それに平和主義に基づいて国家を運営してきたのです。これを戦後民主主義とも呼びますが、多くの人が「正しい方向」での体制と評価しています。しかし、一部では戦後民主主義の出発点が「敗戦」であることに引っかかる人もいる。敗戦の歴史に強く反発を持つ人がいて、その恨む気持ちを戦後民主主義に向けるようになったのです。

トオル…「恨む気持ち」ですか。一種のジレンマみたいなものなのかなぁ。

シズカ…太平洋戦争が終わってから今年で76年だよね。戦争を実際に経験した人はかなり高齢になって、政治や教育の場では少ないように思えるわ。

木村…戦後民主主義に反発する人は2つのタイプに分けられますね。1つは戦時中を生きた世代の「自分たちは正しかった」というもの。こちらは自己欺瞞的な正当化欲求に基づいています。もう1つは現在の社会に何らかの不満を持つ層です。社会不満を戦後民主主義のせいにする。そういった人たちは、少なくとも戦後民主主義的なものに悪口を言えれば何でも良かった。悪口が言えるものを探しているときに、教育勅語がピッタリだったのです。

トオル…「悪口」の手段に、教育勅語が利用されたんですね。

シズカ…でもなんでそれが教育勅語でなければいけなかったんですか? 他にも手段はありそうなのに。

木村…教育勅語は戦時中、極端に神聖視された歴史があります。また、戦後になると教育現場から強く排除されたものでもある。つまり、戦後民主主義と対極のポジションになるため、戦後民主主義の否定派はありがたがりますよね。

シズカ…なるほど。極端な愛国派の人がありがたがるのはわかったけど、政治家の人にも賛同者が多いってニュースで見たわ。「教材として用いることまでは否定されることではない」という閣議決定も出ましたよね。

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