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打ち合い、投げあいだけでは戦えない。WBC前コーチ・仁志敏久氏の感じた世界との差

WBCでコーチとして感じた世界との「差」

独自の世界観を持って理想を学び、考える人へ聞く1週間集中インタビュー企画。
第一回は、WBC2017侍ジャパンコーチでありU-12代表監督でもある仁志敏久さん。プロ選手としても名プレイヤーだった仁志さんは、侍ジャパンそして将来のプロ野球界を担う「子ども」たちの日本代表監督として指導をしている。そこで感じることとはーー。

<WBCは、準決勝敗退。課題がある一方で戦前の評価を覆したとも言える。肌で感じたこととはどんなものだったのか(全二回)>

Q1.ワールドベースボールクラシック。現場で感じた「世界との差」は?

――WBC、お疲れさまでした。日本ではとても注目されていましたが、現場にいるとやはり大変でしたか。

仁志 そうですね。

――敗退が決まったときはどんな気持ちだったのでしょう。

仁志 試合に負けてしまった悔しさが大きかったですね。でも正直なところ、日本に帰ってきて「やっと終わったか」と安堵したことも事実です。

――侍ジャパン常設化後、初めてのWBCと言えます。2013年に守備・走塁コーチに就任されて長い期間携わりました。

仁志 そうですね。厳しい声もたくさんありましたから。特に、プレミア12のときはものすごい逆風がありましたし、WBC前にネガティブな意見も多く耳にしましたから、終わってほっとした、というところもあったのかな、と思いますね。

――負けてしまった試合、アメリカとの一戦はどう感じられましたか。拮抗した試合ではありましたが、一方で点差だけでは語れない「差」もあったように感じました。

仁志 差というよりも違いでしょうか。力やパワーなどの体力的な違いです。それでも、国同士で対戦するのであれば勝ち目は十分あると感じました。今後も変わらず日本らしく野球をやっていけばまだまだチャンスはあると思います。

 

――対戦相手に、これはすごいと感じるようなことはありましたか。

仁志 いや、特別びっくりするようなことはありませんでした。そもそも出場している選手の力量はものすごい、と分かっていたので「やっぱりすごいな」と。

――例えば打者に関しては、あのスピードで小さく変化する球(いわゆるツーシームなど)になれていないと打てない。逆にアメリカのバッターも綺麗な4シームに対してすぐにアジャストはできない。そこはお互い「慣れ」の問題のように感じました。

仁志 そうですね。ただ世界基準の野球を考えたときに日本的な野球が主流ではない、ということも考えなければいけないと思います。日本的な野球(例えば投手では4シームが主体であるような野球は)、それはアジア的な野球と言い換えられると思いますが、当然アジアでしかやっていませんよね。一方で、欧米式の野球は(北南米やヨーロッパといった)広い範囲でやられています。代表に選ばれる多くの選手がその中心となるメジャーリーグでプレーをしていて、欧米スタイルでやっている。世界の各国と戦うWBCのような大会になれば、単純に欧米式の野球が主流になるわけです。その中で、何の策もなくお互い打ち合い投げ合いをやっていたらそれは厳しい戦いになるな、と。

――仁志さんも現役時代にアメリカ独立リーグでプレーした時期があります。投げるボールの差などは感じられましたか。

仁志 僕の経験はメジャーリーグのそれとは質が全然違いますけど、でもやっていれば慣れはしますね。ただし1、2試合で適応できるかと言えばそれは簡単ではないと思います。(第二回へ続く)

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仁志 敏久

にし としひさ


 



1971年生まれ。茨城県出身。右投右打。常総学院高校、早稲田大学、日本生命を経て1995年にドラフト2位で読売ジャイアンツに入団。強打、好守の内野手として活躍。2007年に横浜ベイスターズに移籍し2010年にはアメリカ・独立リーグでプレー。同年引退。NPB通算、1591安打、打率.268、154本塁打。1996年新人王、ゴールデングラブ賞4回。2013年に侍ジャパンコーチ就任。2014年より侍ジャパンU‐12監督となり、2016年には第9回BFA U‐12アジア選手権を優勝。著書に「個の力がUPする 野手実戦メソッド」「プロ野球のセオリー」(鳥越規央との共著)


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