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教育オンライン化はコロナ危機以前からの既定路線「大学編」

オンラインで卒業可能大学はアメリカに400以上だが日本は2大学だけ

■なぜ高等教育のオンライン化は進んできたのか、あるいは進むのか

アメリカに比較すると、日本の大学のオンライン化は非常に遅れてはいるが、ともかく、コロナ危機の前から大学のオンライン化は進んでいた。

香港中文大学教授の牧野成史は、ウエッブ誌「世界経済評論IMPACT」での2020年4月6日掲載のコラム「オンライン授業を真剣に考えた方が良い理由」において、高等教育がデジタル化するほうが良い5つの理由を述べている。
http://world-economic-review.jp/impact/article1683.html

第一の理由は、オンライン講義は、大学という場の制約から教員や学生を解放するということだ。対面式講義のストレスを感じることなく、直接に教師に質問することなく、リアルタイムのチャット機能を駆使することによって、学生は講義運営に参加できる。教師も学生の質疑に即座に応答できる。

第二に、前述のように、オンライン化は学生にとっても大学にとっても、経済的時間的負担が減る。大学側にとっては教室などの施設を保有維持するコストがかからないので、授業料は安くなる。学生にとっては通学や下宿のコストがかからない。アメリカなら寮費がかからないし、日本ならば遠距離通学の必要がなければ交通費はかからないし、時間的にも自由になる。

通学するとなれば、衣類外見にも気をつけなければならない。女子学生なら公共交通機関で性犯罪者に遭遇する危険もある。大学生活において、通学に付随する経済的時間的負担のみならず、体力的精神的負担は馬鹿にならない。

第三に、講義や講師の水準が確保される。オンライン講義は「透明性」が確保されるので、大学にとっては無能な教員を雇用するリスクが少ない。学生は受講登録前に大学のサンプル講義をチェックできる。

第四に、大学の入試選抜が柔軟になる。デジタルプラットフォームに受講生定員制約はないので、入学希望者をより一層多く受け入れることができる。入学したければ、全員が東京大学に入学することもできるのだ。卒業できるかどうかは別にして。良質のコンテンツを提供できる大学には入学希望者も増える。

第五に、教育の国際化が進む。留学しなくても外国の大学の提供する講義を受講できる。発展途上国の若者も受講できる。生まれた環境の水準を超えて、誰もが世界基準の教育を受けることができる。

確かにインターネットは、インターネットを駆使できる通信環境とスキルさえあれば、経済階層や性別や年齢や身体的障害がもたらす情報格差を、かなり無効にできる。

つまり、オンライン化は、大学にとっても学生にとってもコストが削減できるし、質のいい講義を広く多様に受ける機会を学生に提供できる。何よりも、やはりコスト削減は、大学にとっても学生にとっても大きな魅力だ。高等教育機関での学費はあまりに高額になり過ぎた。

 

■大学のオンライン化にも問題はある

言うまでもなく、高等教育機関のオンライン化にも問題はある。

まず、学生の受講環境だ。レポート作成までスマホで済ませている学生がいる。パソコンは家族共有か大学設置のもので済ませ、自分専用のパソコンを持っていない比率は2017年調査で50パーセントだ。
https://lab.testee.co/pc-result

しかし、スマホでは、90分の大学講義をオンラインで何クラスも受講するにはギガ不足だ。しかし、これは大学が端末を無料提供すればいいだけのことなので、解決は容易だ。

最大の問題は、大学のオンライン化は、学生の主体性や勉学意欲や吸収能力の格差までは小さくできないということだ。
YouTubeのような10分程度の動画に慣れた学生では、講義90分の視聴時間に集中力と興味は続かないし、収録された講義を繰り返し視聴して学ぶ粘りはない。オンライン大学の卒業率は、従来の伝統的オフライン大学の卒業率より、かなり低い。

また高等教育のオンライン化は教員の質を限定的にしか保証できない。前述の香港中文大学教授の牧野成史がオンライン講義をするときは、一人の技術スタッフが必ずつくそうであるが、日本だとそれぞれの大学教員に作業を丸投げする傾向がある。すなはち、研究能力や学問的見識は高くても、学生にアピールする魅力があっても、オンライン講義準備スキルが低い教員が排除されることになる。

現在、文部科学省は大学卒業必修単位124単位のうち60単位まではオンラインでの取得を認めている。しかし、おそらく、この許容範囲はどんどん広がる。語学や教養課程科目はオンライン化されるか、今まで以上にオンライン化に慣れた予備校や専門学校に委託される。

MOOCが始まった当時に、「MOOC革命で日本の大学は半数が消滅する!高等教育のオンライン化がもたらす「衝撃の未来」」というコラムが、ジャーナリストの山田順によって2013年7月に発表された。
https://toyokeizai.net/articles/-/15581

教育の完全オンライン化が実現する時期が、そろそろ近くなってきたようだ。それによる高等教育機関の淘汰も進行しそうだ。その一番の起爆剤が新型コロナウイルス感染拡大であることまでは、誰も予測していなかったが。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。


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