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兵装転換中の日本空母が
アメリカ軍の奇襲を受ける

太平洋戦線のターニングポイント ミッドウェー海戦の真実 第3回

 

前回はこちら:ミッドウェー海戦の戦前予想は空母の数で勝る日本海軍に有利!
 日本軍の来襲を予知していたアメリカ軍の戦闘機は有効な迎撃を行い、また攻撃機は接近する上陸部隊を乗せた輸送船団を襲った。さらに同島の陸上部隊もしっかりと防御態勢を整え、空襲による被害を最小限に抑えている。
 空襲の指揮官は、「第2次攻撃の要あり」と母艦に連絡した。このためアメリカの空母の出現を予想していた艦載機は、魚雷を陸用爆弾に積み替える作業となった。狭い空母の飛行甲板はこれにより大きく混乱する。

 この戦闘のさなか、ついに偵察機がアメリカの空母群を発見し、その報告が入る。となると艦載機の搭載兵器を再び対艦用に戻さなくてはならない。つまり対艦攻撃用→陸上用→対艦用と目まぐるしい作業の連続であった。これにはおのおの1時間を要している。
 このさい次席指揮官の山口多聞は、陸用装備のまま発艦することを強く具申している。しかし南雲忠一はこれを退けてしまう。

 そしてようやく最初の艦載機が発艦したと同時に、今度は40機にのぼる急降下爆撃機が一気に襲いかかったのである。日本空母の甲板には爆弾、魚雷を積んだ艦載機が並んでおり、そこへ敵弾が命中すれば、結果は誰でも想像することができよう。爆弾命中は赤城、加賀、蒼龍とも2〜4発で、このような状況でなければ、中破程度の損傷で終わっているはずであったから、まさに最大の不運と言えるかもしれない。
 赤城、加賀、蒼龍の3隻は、短時間のうちに大火災。彼女らを救おうとするどのような行為もむなしかった。残った空母飛龍は必死の反撃を実施するものの、ヨークタウンを大破するのが精いっぱいだった。その彼女もしばらくのちエンタープライズ、ホーネットから飛来したアメリカ機によって、先の3隻の後を追ったのである。さらに日本軍はミッドウェー島からの攻撃で、重巡三隈が撃沈され、最上が大破している。

 このようにして海戦は終了したが、日本軍は空母4、重巡1隻、航空機260機を失い、戦死者は3000名を超えた。アメリカ軍は空母1、駆逐艦1隻、航空機150機を喪失しているが、戦死者は日本側の10分の1に過ぎなかった。

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三野 正洋

みの まさひろ

作家、NPO法人「DEM博物館を創る会」理事。1942年千葉県生まれ。大手造船会社にて機関開発に従事の後、日本大学准教授(一昨年定年退職)『日本軍の小失敗の研究』(正・続、光人社)、『「太平洋戦争」こう戦えば…―「If」の太平洋戦争史』(ワック)ほか著書多数。


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