●トランプ大統領を支える熱狂的支持者の存在

トオル…じゃあ、ヒラリーさんはなぜ、負けてしまったのでしょう。
渡辺…有権者が白けていたように思います。オバマさんとの対比で言えば、彼女は白人ですし高齢(69歳)ですから。その点、トランプさんは、今のアメリカに漂っている現状や、エスタブリッシュメント(支配階層、既得権益層)に対しての不満をうまくくみ取って、盛り上がりを演出することができたということなのではないでしょうか。
シズカ…ヒラリー・クリントンさんの魅力がなかったということなのね。
渡辺…そうですね。一方で、トランプさんを熱狂的に支持した人たちには共通した思いがあることも読み取れます。トランプさんのツイッターをフォローするような熱心な支持者の多くは、白人で製造業や農業に従事する人たちです。一概には言えませんが、主に大学に行かず高校卒業後就職をしたような労働者ですね。彼・彼女らにとって、社会が多様化し、国際競争力、求められるスキルが高まる今の時代は非常に生きづらい。雇用は不安定になり、取り残された感覚があるわけです。そこで、こう思う。「今は自分たちの知っているアメリカじゃない」――。
シズカ…どういうことですか?
渡辺...これはトランプさんも同じ感覚を持っているように思いますが、第二次世界大戦後、「黄金の50年代」と言われた時代のアメリカは、白人が中心で、ミドルクラスが分厚く、国際的にも力があって「輝いていた」。それに対して、「今はずいぶん様変わりしている」と。その怒りとか憤りとかいうものが、トランプさんを通して表現されているような感じがするのです。
シズカ…現状に対する不満が大きいわけね。
トオル…そうだとしても、僕が国民だったら、あんなに暴言を吐いたり、スキャンダルにまみれた大統領を認めたくないけどなあ。
渡辺…熱狂的な支持者にとって、トランプさんの個人的なスキャンダルは些末なことなんですよ。加えて、それを報道するメディアは、支持者にとって「エスタブリッシュメント」なわけです。だから、叩けば叩くほど、かえって盛り上がる。「本当の意味で自分たちのために、社会的、政治的な建前を無視してでも戦ってくれている」「これは本当のリーダーだ」という感覚なのでしょう。

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