【脳梗塞になった出版局長】病院では転倒に一番気をつけろ! もし転倒したらインシデントレポートだ!【真柄弘継】連載第5回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

【脳梗塞になった出版局長】病院では転倒に一番気をつけろ! もし転倒したらインシデントレポートだ!【真柄弘継】連載第5回


「まさかオレが!? 脳梗塞に!」ある日突然人生が一変。衝撃の事態に見舞われ仕事現場も大混乱!現役出版局長が綴った「半身不随から社会復帰するまでのリアル奮闘日記」。連載配信前から出版界ですでに話題に!だって名物営業マンですから!

誰もが発症の可能性がである「脳卒中」。実際に経験したものでないと分からない〝過酷な現実と絶望〟。将来の不安を抱えながらも、立ち直るべくスタートした地獄のリハビリ生活を、持ち前の陽気さと前向きな性格でもって日々実直に書き留めていったのが、このユーモラスな実録体験記である

リハビリで復活するまでの様子だけでなく、共に過ごしたセラピストや介護士たちとの交流、社会が抱える医療制度の問題、著者自身の生い立ちや仕事への関わり方まで。 克明に記された出来事の数々は、もしやそれって「明日は我が身!?」との声も!?  笑いあり涙ありの怒涛のリハビリ日記を連載で公開していく。

第5回は病院では転倒に一番気をつけろ! もし転倒したらインシデントレポートだ!

出版局長の明日はどっちだ!?  50代働き盛りのオッサンは必読!


一番左が脳梗塞発症前の、健康なように見えて実は健康ではなかった現役出版局長・真柄弘継氏。100キロを超える巨漢だった

 

 

第5回

病院では転倒に一番気をつけろ! もし転倒したらインシデントレポートだ!

 

◾️9月1日月曜日

朝の自主トレは腕の筋トレの種類が増えたので運動量も増えて、けっこうな量の汗が出るもんだ。

自主トレが終わり着替えていると、看護師さんが月一回の採血に来られた。

素っ裸ではなかったが、入浴介助ですべて晒しているから、いまさら恥ずかしいとは思わない()

今日は午前中は手と腕のリハビリ。

ストレッチは目を剥くほどの痛みだが、それ以外はなんだか眠くて仕方がない。

夜はしっかりと寝ているはずなのに、はたしていったいどうしてなんだろうか?

午後は足のリハビリ。

最近は歩き方でセラピストさんたちから指摘を受けることがない。

安定の歩き方になってきたけれど、最大の課題は体力不足。

これは歩く距離を延ばして身につけるしかない。

早く自立4[注]へとなるのが当面の目標だ。

リハビリの合間もマシンで自主トレ。

部屋でも歩きまわり、とにかく自分で出来る体力作りは地道に行うしかないのだ。

 

[注] 
自立 
リハビリの自立度は、**FIM(機能的自立度評価法)や「障害高齢者の日常生活自立度」**など、いくつかの評価方法があります。 この日記では病院の中での評価基準を基にしています。 
自立1=車椅子で2階フロアは自由に移動できる。 
自立2=車椅子で病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。 
自立3=杖で2階フロアを自由に移動できる。 
自立4=杖で病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。 
自立5=杖無しで2階フロアを自由に移動できる。
 自立6=杖無しで病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。

 

 

◆入院期限ギリギリの11月20日まで入院させて欲しいと強く伝える

 

◾️9月2日火曜日

午前中は足のリハビリが二つ。

どちらも歩き方は綺麗になったと言われた。

最近はバランスの悪いところの指摘を受けることがなくなった。

二つ目で腹筋周りの筋トレを教えていただき、マットに膝立ちになり、前後左右に動いた。

右足は足首が自在に動かせないので、左の足首でサポートすると

「器用な左脚ですね」

と褒められた()

今日の昼御飯から食事を4人掛けテーブルから、窓際に変更してもらった。

 

午後は月に一度の主治医と担当看護師、担当療法士、担当相談員と、私と家族()との面談。

Y先生から現在の回復具合について。

日常生活に戻るためのチェックポイントが126点満点の111点となっており、退院可能なレベルであることを説明される。

けれども今の身体の状態で退院は厳しい。

働かなくても経済的な余裕がある人でないと、とてもじゃないが困難極まりない。

入院期限ギリギリの1120日まで入院させて欲しい旨を強く伝えたのである。

あとで相談員さんから、

「多くの患者さんは早く退院したくて、入院自体がストレスとなっているから、少しでも早く退院出来ることを言われるんですよ」

と補足されていた。

私は入院当初は9月には杖を使って歩けるような気がしていた。

そして10月早々には退院したいと言っていた。

けれど、毎日のリハビリと退院後の仕事や私生活を考えたら、そりゃ無理だと自覚した。

期限一杯可能な限りリハビリを励むことで回復したいと考えを改めたのだ。

退院は今のタイミングでは無い旨を、Y先生に強く訴えたのだ。

病院では本人の意思を尊重される。

あとは直近の装具作成や自宅での家屋調査について話し合って面談は終わった。

 

面談のあとは装具の発注。

装具師さんから細かく要望をヒアリングされ、木曜日に採寸、翌火曜日に仕上げのチェック、翌木曜日に納品となった。

装具が来たら自立3のチェックを受けて、合格すれば車椅子からの卒業となる。

一気に展望が開けたような気がしてきた。

先行きが見えてきて気持ちもかなり楽になってきた。

 

夜、就寝前のスケジュールチェック。

それまで食堂で本を読んでいると、この病院での最大のインシデントレポート案件が発生!

高齢の方が勝手に車椅子から立ち上がり、足を引っ掛けて転倒したのだ。

誰も見ていない、ほんの僅かな時間で起きた転倒。

まさに一瞬のスキをついた感じである。

看護師さん、介護士さんたちが慌てて駆けつけて介抱を始めた。

しばらくは大変だったが、当直医が来てから騒動は終息したのである。

次のページ寝返りで動かない身体に反応して目が覚めてしまう毎日

KEYWORDS:

オススメ記事

真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

この著者の記事一覧