「好き」と浮気男に翻弄された44歳独身女性が、母の死後に「ひとりが平気」と悟るまで【谷口友妃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「好き」と浮気男に翻弄された44歳独身女性が、母の死後に「ひとりが平気」と悟るまで【谷口友妃】

ミドル独女~私たちのホンネ~ 44歳裕子さんの場合

■35歳のときに最愛の母の死を経験

 

 恋に生き、愛されることを求めて生きてきた裕子さん。

 そんな裕子さんの人生観を大きく変える出来事が起こった。

 35歳のとき、母親が脳腫瘍で倒れたのだ。

 病が分かったのは、まっすぐ歩けない症状が出てきたからだという。大きな病院で調べてもらったところ、脳にたくさんの腫瘍が見つかった。進行性ではなかったが、一度の手術で腫瘍を取り切ることができない状態だった。その手術は無事に終わったが、5年後には再び症状が出てきてしまった。

 そこで左足に麻痺が残る手術の選択を迫られた。半身麻痺になる覚悟で手術を受けたとしても、すべてを取り切れずに再発する確率が高いという。裕子さんの母は、生き残れる可能性にかけて一度は決意したものの、医師の不用意な言葉にパニックになってしまい、手術をやめた。

 その後に転院した病院で穏やかな日々を過ごしたあと、看取り期には自宅に帰って最期を迎えた。

「母を亡くしたとき、これ以上に失ってつらいものはないと思いました。それに比べると恋愛で『自分はつらい。かわいそう』と悩んでいたのは小さなことでした」

 そう静かに語る裕子さん。本当に、耐えられないほどの喪失の悲しみだったのだろう。裕子さんから伝わってくる思いの深さに、筆者も自然と涙がこみ上げてきた。

「いまでもよく母のことを考えるし、会いたい思いがずっと残っています。夜勤明けで疲れているときなんかに、よく母のことを思い出します」

 裕子さんの母は、自分が欲しいものを我慢しても、子どもたちやお父さんに何か買ってあげたいと考えるような人だったという。やさしいけれど、してはいけないことに対してしっかり叱ってくれる母でもあった。

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谷口 友妃

たにぐち ゆき

幼少期に父を亡くしシングルマザーの家庭で育つ。心臓病の母との生活で感じた社会の歪みや、働く意味を求めて天職探しをした経験などから「仕事と生きがい」、「幸せな社会のつくり方」などのテーマに関心を持つ。2014年から執筆業を始め、多様な業界で働く人を紹介する社内報の巻頭記事や医療情報の取材記事、介護問題を扱う著名人の連載インタビュー企画などを担当。過去に取材した人の数は2000人以上にのぼる。読売新聞オンライン、みんなの介護「賢人論。」などに記事を執筆。

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