「好き」と浮気男に翻弄された44歳独身女性が、母の死後に「ひとりが平気」と悟るまで【谷口友妃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「好き」と浮気男に翻弄された44歳独身女性が、母の死後に「ひとりが平気」と悟るまで【谷口友妃】

ミドル独女~私たちのホンネ~ 44歳裕子さんの場合

■「浮気相手」として逢瀬を重ねたことも…

 

 1年半ほど経ったある日、ふたたび隼人さんから連絡が来た。その電話で、別れの理由は、ほかの女性との間に子どもができたからだと分かった。

 連絡が来た頃、隼人さんの結婚生活はうまくいっていなかった。奥さんの家庭が、ありえないほど変わっていたためだ。妹の妊娠に嫉妬した姉によって風呂場に閉じ込められるといった、虐待のような行為が行われていた家庭だったという。

 そして裕子さんは、隼人さんが働くお店に会いに行った。今度は裕子さんが“浮気相手”として……。離れていた時間の空白を埋めるようにふたりは逢瀬を重ねたが、そんな生活も長くは続かない。ある朝、隼人さんの奥さんから裕子さん宛に電話がかかってきた。「どういうことですか?」と。ややこしい関係に巻き込まれるのが苦しくなった裕子さんは、隼人さんと会うのをやめた。

 そして2年後。久しぶりに隼人さんから連絡がきたが、今度はキャバクラで出会った女性と結婚していた。しかし、2回目の結婚生活もうまくいっていなかったようだ。夫婦でお店を出そうとしていたものの、キャバクラに比べて薄給になってしまう奥さんのモチベーションが下がり、ギクシャクしていたようだ。

 隼人さんとヨリを戻したい? という疑問をぶつけると「いやぁ、もういい」と苦笑いしながら首を横に振っていた。信じては裏切られての繰り返しに付き合わされ、ややこしい問題に巻き込まれてきた裕子さんはさすがにそこまでの気持ちはないようだ。

 ただ客観的に見れば、裕子さんと一緒にお店を持ったならば、きっと隼人さんの経営の苦労も減り、常連客がいっぱいの人気店になったのにと思う。

 コンビニでお店を切り盛りし、介護を通して人と向き合ってきた裕子さんは、相手の気持ちをよく受容しながら寄り添ってくれる安心感のある女性だ。

 この取材時も、裕子さんは数時間後に友人と食事する予定があったが、わざわざ隣町での筆者の観光に付き合ってくれるという優しさを見せてくれた。

 裕子さんには、隼人さんと別れたあとに付き合った人がいたが、就職してまだ数年の相手は、仕事のことで精一杯。煮え切らない関係のまま、いつしか別れることになった。そうして、裕子さんは40代になった。

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谷口 友妃

たにぐち ゆき

幼少期に父を亡くしシングルマザーの家庭で育つ。心臓病の母との生活で感じた社会の歪みや、働く意味を求めて天職探しをした経験などから「仕事と生きがい」、「幸せな社会のつくり方」などのテーマに関心を持つ。2014年から執筆業を始め、多様な業界で働く人を紹介する社内報の巻頭記事や医療情報の取材記事、介護問題を扱う著名人の連載インタビュー企画などを担当。過去に取材した人の数は2000人以上にのぼる。読売新聞オンライン、みんなの介護「賢人論。」などに記事を執筆。

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