「好き」と浮気男に翻弄された44歳独身女性が、母の死後に「ひとりが平気」と悟るまで【谷口友妃】
ミドル独女~私たちのホンネ~ 44歳裕子さんの場合
■裏切りの連続のなかで不安と闘う日々
が、同棲ほどなく隼人さんの浮気性が顔を出すように。

「ある日、仕事から帰ってくると、何か変だなと思ったんです。いつもと部屋の雰囲気が違う?そう思いながら部屋のなかを見回していると、女性を連れ込んでいた痕跡を見つけました」
裕子さんはすぐに隼人さんに問い詰めた。「浮気する人は無理だから!」と別れようとしたが、「二度としない」と何度も何度も平謝りされて、根負けしてしまった。
しかし、1年もしないうちに“再犯”が発覚した。「あげたチャンスは無意味でした」と裕子さんは少し悲しそうに笑う。
「ここで電話して」と言って相手との関係を切らせたこともある。隼人さんは、「お風呂場に電話を持ち込むような」分かりやすい匂わせをするタイプだった。
「彼と話している女の子を見ていると、モテるのが分かるんです。やっぱり好きって言われるのも気分がいいんだろうなと思って」
ちなみに筆者は、いくらかっこよくても一緒にいて不安しかない相手には近づかない。恐ろしい顛末しか待っていない。世の中にはもっと楽しいことがたくさんある。そう思ってしまう。
しかし裕子さんは隼人さんにまっすぐ入れ込んだ。蛍光灯に近づく虫を気にするように、隼人さんに近づく女性の存在を気にしながら。結婚を前提として隼人さんとの子どもを授かることを考えたが、ふたりの間に子どもはできなかった。
■30歳の節目で別れを切り出された
30歳になったある日。
突然、隼人さんから理由もなしに「別れよう」と言われた。意味不明な突然の別れなど受け入れられるはずがない裕子さんは、「悪いところがあるなら直す」と食い下がったが、聞き入れてくれなかった。その後も同棲生活を続けたが、一緒にいても「心ここにあらず」の隼人さんを見るのが悲しくなり、別れる決意をした。
友達に手伝ってもらいながら荷物を運び出して実家に帰った裕子さんは、母に泣きついた。
「私はもう結婚なんてできない。これから一生独身だから」
この世の終わりのように泣いている娘を、母はやさしくなぐさめた。
「本当にその人が運命の人だったら、またどこかで巡り会えるんじゃない」
それからは、泣き疲れて眠りにつく日々を過ごした。相手が憎いはずなのに、思い出すのは楽しかったことばかり。ひとりになると「私は捨てられた。もう死にたい」という思いでいっぱいになる。だから、休日はいつも友達と過ごした。
