【ニューヨーク市長】急進左派のゾフラーン・マムダーニーが当選。しかしそれはMAGAトランプ派の敗北を意味するわけではない!【中田考】
《中田考 時評》文明史の中の“帝国日本”の運命【第3回】
(2)ゾフラーン・マムダーニーとは何者なのか
「ゾフラーン・マムダーニーとは何者なのか」は、“帝国日本”がこれから問い続けなければならない課題であるが、筆者は、ゾフラーン・マムダーニーが何者なのかを理解するカギは、ゾフラーンの父マフムード・マムダーニーの学問的業績にあると考える。
そこでゾフラーンの人物像の概略の紹介はウィキペディアの日本語版に譲り[5]、以下では主として最も詳しいペルシャ語版『ウィキペディア』に基づき、彼の父である人類学者マフムード・マムダーニーについての客観的情報を整理したい。

マフムード・マムダーニー(Mahmood Mamdani)は1946年4月23日、イギリス植民地時代のインドのボンベイでタンザニア生まれのメモン・スンナ派のグジャラート商人の両親の間に生まれ1952年頃にウガンダに移住したインド系ウガンダ人である。
初等教育はまずイスラーム神学校(madrasah) に通った後、その後インド系の公立小学校に進学しグジャラート語、ウルドゥー語、スワヒリ語を話して育ち、6年生から英語の学習を始め、カンパラ旧中学校に進学し、東アフリカの学生をアメリカやカナダの大学に進学させるアメリカの奨学金制度「ケネディ・エアリフト」計画に参加し1963年にピッツバーグ大学に入学し、1967年に政治学の学士号を取得して卒業しタフツ大学フレッチャー法律外交大学院で学び1968年に政治学修士1969年に法律外交修士号を取得し1974年にはハーバード大学で「ウガンダにおける政治と階級形成」をテーマに博士号を獲得した。
1972年初頭にウガンダに帰国しカンパラのマケレレ大学で教育助手に任用されたが同年末にイディ・アミン大統領により民族的理由で追放され、イギリスの難民キャンプに移り、1973年半ばタンザニアのダールッサラーム大学に採用され博士論文を完成させ、反イディ・アミン運動にも参加し、1979年ウガンダ・タンザニア戦争後にアミンが失脚すると、世界教会協議会の国境評議会の一員としてウガンダに戻った。
1984年、セネガルのダカールでの会議出席中にミルトン・オボテ政権を批判したことによりウガンダ国籍を剥奪され、無国籍者となり、ダールッサラームに戻り、1986年春学期にはミシガン大学アナーバー校で客員教授として教鞭をとったがオボテの失脚に伴い1986年6月に再びウガンダに帰国した。
その後ウガンダの非政府研究機関「ベーシック・リサーチ・センター」の創設所長に就任し、1987年から2006年までその職にあったが、その間プリンストン大学(1995~1996年)、ケープタウン大学でアフリカ研究講座教授を歴任し、1998年から2002年にかけてはアフリカ社会科学研究開発評議会(CODESRIA)の会長を務めた。
マフムード・マムダーニーの生涯の概観は、彼が一貫して社会運動家、研究者としてのキャリアを歩んできたことを示している。中でも彼が何度も国外追放になり、国籍剥奪され、難民キャンプに送られ、無国籍者になりながらも、その体験を研究に組み込み思索の幅を広めていった事実は知行合一の彼の学問に深みと信頼性を与えている。
ゾフラーンもウガンダとアメリカの二重国籍であり、宗教的にはイスラーム教徒であるが、ゾフラーンの多様で複雑な属性の中ではその宗教帰属は決して中核ではないことは父のマフムード・マムダーニーと同様である。
それにもかかわらず、彼がアメリカに敵対するイランに支援されており、アメリカをシーア派に洗脳しようとしている、という情報操作が、MAGAトランプ支持者やシオニストのメディアの間で行われたのは厳然たる事実である。[6]
そしてそのことの意味を理解するためには、「マムダーニー当選がいかに誤解されうるのか」を考える必要がある。
注 [5] 日本語版では彼の宗教帰属はイスラーム教徒としか記されていないが、英語版、アラビア語版、ペルシャ語版、ウルドゥー語版などでは12イマーム派と明記されている。 [6] MAGAトランプ支持者やシオニストのメディアの間で行われている。 たとえば2025年11月6日付『Fox News オンライン』が「マムダーニーはホージャ・シーア派ムスリムとして自身を位置づけており、イランの十二イマーム派につながる宗派に属する(Mamdani identifies as a Khoja Shia Muslim, part of a sect linked to Iran’s Twelver tradition)」と報じており、また11月5日付のイスラエルの日刊紙『Israel Hayom』が、「ニューヨーク市がシーア派ムスリムの市長を選出――アメリカのリベラル・エリートにとっての政治的地震(NYC elects Shiite Muslim mayor — a political earthquake for America’s liberal elites)」とのデマを流し、その翻訳転載が Fox、Gateway Pundit、Truth Social によって拡散されている。
KEYWORDS:
✴︎KKベストセラーズ好評既刊 新装重版✴︎
★初の女性新首相・高市早苗「政治家の原点」がここにある★
『アメリカ大統領の権力のすべて』待望の新装重版
◎民主主義国家の政治をいかに動かし統治すべきか?
◎トランプ大統領と渡り合う対米外交術の極意とは?
★政治家・高市早苗が政治家を志した原点がここにある!
「日本は、国論分裂のままにいたずらに時間を食い、国家意志の決定と表明のタイミングの悪さや宣伝下手が災いし、結果的には世界トップ級の経済的貢献をし、汗も流したにもかかわらず、名誉を失うこととなった。
納税者としては政治の要領の悪さがもどかしく悔しいかぎりである。
私は「国力」というものの要件は経済力」、「軍事力」、そして「政治力」だと考えるが、これらの全てを備えた国家は、現在どこにも存在しない。
(中略)
そして日本では、疑いもなく政治力」がこれからのテーマである。
「日本の政治に足りないものはなんだろう?」情報収集力? 国会の合議能力? 内閣の利害調整能力? 首相のメディア・アピール能力? 国民の権利を保証するマトモな選挙? 国民の参政意識やそれを育む教育制度?
課題は随分ありそうだが、改革の糸口を探る上で、アメリカの政治システムはかなり参考になりそうだ。アメリカの政治にも問題は山とあるが、こと民主主義のプロセスについては、我々が謙虚に学ぶべき点が多いと思っている。
(中略)
本書では、行政府であるホワイトハウスにスポットを当てて同じテーマを追及した。「世界一強い男」が作られていく課程である大統領選挙の様子を描写することによって、大統領になりたい男や大統領になれた男たちの人間としての顔やフッーの国民が寄ってたかって国家の頂点に押し上げていく様をお伝えできるものになったと思う。 I hope you enjoy my book.」
(「はじめに」より抜粋)
◉大前研一氏、推薦!!
「アメリカの大統領は単に米国の最高権力者であるばかりか、世界を支配する帝王となった。本書は、連邦議会立法調査官としてアメリカ政治の現場に接してきた高市さんが、その実態をわかりやすく解説している。」

ALL ABOUT THE U.S. PRESIDENTIAL POWER
How much do you know about the worlds’s most powerful person―the President of the United States of America? This is the way how he wins the Presidential election, and how he rules the White House, his mother country, and the World.



<著者略歴>
高市早苗(たかいち・さなえ)
1961年生まれ、奈良県出身。神戸大学経営学部卒業後、財団法人松下政経塾政治コース5年を修了。87年〜89年の間、パット•シュローダー連邦下院議員のもとで連邦議会立法調査官として働く。帰国後、亜細亜大学・日本経済短期大学専任教員に就任。テレビキャスター、政治評論家としても活躍。93年、第40回衆議院議員総選挙に奈良県全県区から無所属で出馬し、初当選。96年に自由民主党に入党。2006年、第1次安倍内閣で初入閣を果たす。12年、自由民主党政務調査会長に女性として初めて就任。その後、自民党政権下で総務大臣、経済安全保障大臣を経験。2025年10月4日、自民党総裁選立候補3度目にして第29代自由民主党総裁になる。本書は1992年刊行『アメリカ大統領の権力のすべて』を新装重版したものである。
✴︎KKベストセラーズ「日本の総理大臣は語る」シリーズ✴︎

✴︎KKベストセラーズ 中田考著書好評既刊✴︎
『タリバン 復権の真実』
『宗教地政学で読み解く タリバン復権と世界再編』
※上の書影をクリックするとAmazonページにジャンプします
オススメ記事
-
【高市早苗】新総理に待ち受ける冷徹な現実。「対中抑止の最前線に立つ地政学的緩衝国家」としての役割【中田考】
-
自民党新総裁・高市早苗、公明党の連立解消で排外主義ポピュリストへの接近と政界再編。一挙に右傾化が加速する危険性大【中田考】
-
イスラエル・イラン“6日戦争”はなぜ起こったのか? 見過ごされがちな宗教的・歴史的要因と、トランプとイランの最大のディールとは【中田考】
-
高市内閣誕生でついに底が抜けた「サヨクの劣化」と「フェミニスト・リベラルの幼稚さ」【仲正昌樹】
-
【速報】高市早苗・女性新首相の原点『アメリカ大統領の権力のすべて』が待望の新装重版!! 「アメリカ政治を知る最良の入門書」として大好評の名著



