七〇年代から始まっていた南シナ海軍事進出

 

 こうしてみると、中国の南シナ海軍事進出は七〇年代半ばから着々と進められてきたわけで、しかも、相手国が別の国との戦争で疲弊したり、米軍のプレゼンスが低下した隙をついて、だまし討ちで武力にモノを言わせて奪い取るという卑怯な手を使ってきた。もともと満潮時に水没する岩礁は、国際海洋法上では島と認められず、領有権や領海を主張することはできない。なのに、実効支配をうそぶき軍事施設まで造ってしまうのは違法行為である。

 習近平政権になるまでは、こうした軍事化の実態は隠され、対外的には「漁民のため」などという民生用の施設のふりをするだけの〝奥ゆかしさ〞もあった。だが、今や地対空ミサイルという明らかな兵器を配備。しかも、米国の衛星写真ではっきりとわかるようにビーチにランチャーを並べて見せた。米国防省によれば、南シナ海でミサイル配備されたのは実は今回が初めてではなく、過去二回あった、という。過去の例は「演習」のための一時的な配備、というポーズを貫いていたが、今回は「領空の防御は当然の権利」とミサイル配備の恒常化を匂わせている。

 こうした軍事拠点化の動きを隠さぬようになったのは、習近平政権がオバマ政権の弱腰を見越しているからだろう。二〇一二年のスカボロー礁事件のときも、オバマは手を出さず、ファイアリークロスの埋め立ては、二〇一四年から始まっていたが、やはり何もしなかった。

 二〇一五年一月から三〇〇〇メートル級の滑走路が建設されているのがわかっていても、何もできなかった。二〇一五年一〇月に米国はようやく、ファイアリークロス近海を駆逐艦に無害通航させる「航行の自由」作戦を行うが、実は作戦二カ月前から水面下では中国に作戦内容を説明して理解を求めるという腰の引けぶりであった。

 その一方で中国は、二〇一六年一月二日にファイアリークロスに新しく造った滑走路で民間機の離着陸テストを行う。北朝鮮の核実験に米国や日本が大騒ぎしていた一月六日は、最大離陸重量七〇トンクラスの大型爆撃機に匹敵するエアバスA319の離発着テストが行われた。これで滑走路が軍用機の使用に耐えうることが確認されたという。一月三〇日に米国は二回目の「航行の自由」作戦を、より中国に近い西沙近海で行うが、中国はむしろそれを「米軍の挑発行為」と非難して、西沙の紅旗9配備などの口実にするのだった。

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