【世紀の大誤報】小泉進次郎候補の「党員抹消」文春報道の検証 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【世紀の大誤報】小泉進次郎候補の「党員抹消」文春報道の検証

中山展宏

 

■第二の検証:告発者の背景と情報源の客観性

 

 次に論考が焦点を当てるのは、文春報道がその根拠のほぼ全てを依存している情報提供者、中山展宏・元衆議院議員の立場と動機である。記事の中で中山氏は、自らが苦労して集めた党員の権利を守るため、巨大な権力に立ち向かう「正義の告発者」として描かれている。しかし、その英雄的な仮面の下には、この問題における極めて偏った利害関係者としての顔が隠されていると、論考は指摘する。

 中山氏は2024年10月の衆院選で議席を失い、同年12月には自らが務めていた神奈川9区の支部長の座にも再任されなかった。今回、投票権を失ったとされる826人の党員とは、彼が支部長時代に自ら勧誘し、管理していた、いわば自身の政治的基盤そのものであった。

 支部長が交代すれば、党組織の管理体制や党員名簿の整理・引き継ぎが行われるのは、党運営における当然のプロセスである。しかし、権力の座を追われた中山氏の視点から見れば、この一連の事務的な流れは、自らが築き上げた城が新しい権力者によって解体されていく過程そのものに映ったであろうことは想像に難くない。そこには、県連の新体制やその後継者に対する複雑な感情や、言葉にならない不満が渦巻いていた可能性は高い。

 文春は、ジャーナリズムの鉄則であるはずの情報源の客観性検証を放棄し、この極めて人間的かつ政治的な背景を完全に無視した。そして、中山氏の言葉を一方的に、かつ無批判に垂れ流したのである。失意の政治家が抱える個人的な動機と、スキャンダルを渇望するタブロイドメディアの思惑が不幸な形で結びつき、彼の私怨が「小泉叩き」キャンペーンの最も強力な武器として利用されたのだと論考は分析する。

 これは正義の告発ではなく、一人の政治家と一社のメディアによる歪んだ共犯関係の産物である。論考は、告発の中身だけでなく、その告発が「誰の、どんな感情によって語られているのか」という深層を見抜く必要性を訴えている。

次のページ隠蔽された「迅速な是正」という不都合な真実

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