世界を汚染する陰謀論。すぐ隣にいる陰謀論者とは?【適菜収】
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第12回
個室には、副島、Mさん、Sさんがいた。副島は開口一番「僕は今、森友学園問題について考えているんだけど、適菜君もこれまで森友事件については追及してきたよね。だからこの対談本は、森友学園問題、加計学園問題に関する緊急出版にしませんか」と言った。
え?
しばらくフリーズする私に、Sさんが「適菜さん、適菜さん」と声をかける。
それで我に返って「女の話だから対談を引き受けたんですが」と言った。
副島「でもこのテーマがいいと思うんだよなあ」。
私は腹が立ったので、「わかりました。では、そちらの方向でやるとしても、まずは企画をたてなおして、その後、また集まりましょう」と言った。
Mさんが慌てて「では今日ここで女の話をやることにしましょう」と強引に話を進めてきた。
私は相手にしないで、トイレに行くと言って席を外し、しばらく外でメールのチェックをしていた。
*
その後、個室に戻ると、妙な空気が流れていた。後から聞いた話では、副島が「適菜君、怒ったかな。まずいな。とりなしてくれ」とSさんに頼んだという。
それでSさんがたわいもない話をして場を和ませようとした。
私が黙っていると、副島は反発したみたいで「僕はこれまですごい業績を積んできた。トランプが大統領になるのを当てたのも僕だ」「日本でトランプ大統領誕生を予言している識者はいなかった」「適菜君はどう予測していたのか?」と聞いてきた。
私が「トランプになると思っていましたが」と答えたので、副島はガチョーンみたいな感じだった。「その根拠は?」としつこく聞いてきたので、イギリスのブレグジットやサンダース現象、ヒラリーへの貧困層の反発などいろいろ考えれば、普通はそう予測するんじゃないですか、みたいなことを言ったら、さらに場が気まずくなった。
*
すると、副島が「適菜君は人類は月に行ったと思う?」と聞いてきた。
「行ったんじゃないですか」と答えると「何割くらいの可能性で行ったと思う?」と。
本当は10割と言いたかったが、私は根がやさしいので、8割と言った。
すると副島は憤慨したのか、「適菜君の保守に関する理論はまだ浅い。私は適菜君より20歳上だが、ずっと研鑽を積んできた。だから適菜君が私と同じ域に達するにはあと20年かかる」と言う。
私「確かに私は全然勉強が足りません。これから20年間、きちんと勉強します。今回の対談は中止にして、20年後に改めて対談をお願いできませんか」。
副島「その頃、僕は死んでいるよお!」。
副島さん、面白い。いい人だし、人当たりも柔らかい。この先、対談することはないが。