世界を汚染する陰謀論。すぐ隣にいる陰謀論者とは?【適菜収】
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第12回
◾️初刷20000部の誘惑
『フォーブス』の元アジア太平洋支局長ベンジャミン・フルフォードと対談本を出したことがある。彼は陰謀論者だが、私はそこでユダヤ陰謀論はトンデモが多いという話をした。出版直後、フルフォードの発言部分がユダヤ人団体からクレームをつけられ、その本は絶版になった。徳間書店の編集者Iさんは「編集作業が甘かった」と謝りにきた。
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そもそも最初から話がおかしかった。Iさんから「井沢元彦さんと宗教について対談してほしい」というメールが来た。私が断ると「企画の説明だけでも一度聞いてほしい」というので、徳間書店に行くと、「今、井沢さん、旅に出てしまったの。代わりにベンジャミンでもいい?」とIさんが聞く。「ベンジャミンでもいい?」という言い方もないだろうと思ったが、初刷20000部という数字に心が揺れた。
昨今、ハードカバーで初刷20000部というのはほとんどない。そのときは金欠だったので、飲み代を稼ぐため、のこのこ対談に出かけて行った。騒動後、私まで陰謀論者だと間違えられたりした。バチが当たったのだろう。一方、陰謀論を批判したことで、太田竜という陰謀論者に絡まれたりもした。
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その後、某所で西尾幹二と話したとき、「そう言えば、あなたはベンジャミンとの対談で徳間書店に迷惑をかけたね」と言うから、「とんでもない。まったく逆で、徳間書店は適菜さんに迷惑をかけたと謝ってきたんですよ」と答えた。その後、話は変な方向に進み、西尾は「そうか、だったら本の広告を載せた朝日新聞が悪いんだな」と一人で納得して去っていった。
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犬も歩けば陰謀にあたる。陰謀論的思考回路の人間には近づかないほうがいい。
文:適菜収