「プロ経営者」の大スター新浪剛史を検証せよ! 統計学が暴く「経営手腕の真実」と疑わしきを罰する「日本企業の未熟さ」【林直人】

◆「新浪効果」の虚実――ローソンとサントリーを揺るがす“CEO神話”の解体
株価4倍、売上高2倍、海外比率50%超――これらは本当に「新浪剛史」という一人の経営者の功績なのか。それとも市況と偶然が生んだ幻想なのか。
◾️「偉人論」という危険な罠
ローソンで株価を4倍に跳ね上げ、サントリーで売上高を倍増させた――ビジネス誌が繰り返し持ち上げてきた「プロ経営者」新浪剛史氏。その輝かしい経歴は、近年の警察捜査を理由とする会長職辞任報道と相まって、今こそ冷静に検証されるべきだ。
問題は明白だ。華々しい数字は本当に新浪氏の手腕によるものなのか。それとも、すでに仕込まれていた戦略投資や、業界全体の追い風がもたらした“棚ぼた”に過ぎないのか。
経営者を「英雄」として祭り上げる危うさ――それこそが本稿の焦点である。
◾️データで暴く「CEO効果」
単なる伝記やインタビューでは真相に迫れない。本稿が採用するのは冷徹な計量経済学的アプローチだ。ローソンとサントリーを「処置群」、セブン&アイやファミリーマート、アサヒやキリンといった競合を「対照群」とし、両者の業績推移を徹底比較。
さらに、景気変動や市場拡大といった「外部要因」を統計的に制御することで、浮かび上がるのは純粋な「新浪効果」だ。果たしてそこに残るのは経営の才覚か、それとも“数字の錯覚”か――。
◾️公的統計と証言の突き合わせ
分析の裏付けとなるのは、金融庁EDINETや有価証券報告書といった一次資料だ。非上場のサントリーについても、サントリー食品インターナショナルの決算データや業界団体の市場統計、さらに新浪氏本人の発言を報道記事から抽出して再構築。
従来の「神話」を盲信するのではなく、冷徹な数字の積み上げによって経営者の真価を問い直す。それこそが本稿の狙いである。
◾️結論に迫る前夜
株価4倍の陰に隠れた市場要因、売上倍増の背後に潜む外部環境――。これまで「英雄」と称されてきた成果を、データのメスが切り刻む。
いま再び問う。「新浪効果」とは本当に存在するのか、それとも私たちが見てきたのは壮大な幻想にすぎなかったのか。