パチンコ業界の“票の工場” ついに暴かれるーー阿部恭久候補を支える幹部逮捕「ネオンの裏で票が動いた」【林直人】
【第5部】“パチンコ票”の暗黒方程式
ーー得票マシーンの正体を暴く
◾️5.1 ネオンが照らす「票のからくり」
分析の冷酷な結論はこうだ。
遊技機台数が多い県ほど、自民党の得票率は有意に高い(β₁=1.87, p<0.05)。
これは単なる相関ではない。他の社会経済要因を徹底的に削ぎ落とした後に残った“むき出しの関係”だ。
だがさらに衝撃なのは、その背後に潜む「二重の補強構造」だ。
・Elderly_Ratio(高齢化率) は β=1.05(p<0.001)という圧倒的な重みを持ち、高齢化が進んだ県ほど自民党の得票率が跳ね上がるという鉄則を裏打ち。
・GDP_pc(一人あたりGDP) は負の係数――つまり豊かな都市ほど自民党は票を失う。
・Agri_Emp_Ratio(農業就業率) はプラス、Univ_Enroll_Rate(大学進学率) はマイナス――地方に留まり、農業に従事する人が多いほど票は自民党へと吸い寄せられる。
結論は恐ろしく明快だ。
パチンコホールは「票を生む装置」そのものであるだけではなく、保守王国=地方の“DNA”を映す代理変数だった。
だが、その代理変数があまりにも強力であるがゆえに、結果として“パチンコ=自民党”という方程式が、全国に刻み込まれてしまったのである。また、今回の事件を通じて、ますますそういう見方は加速するだろう。
◾️5.2 ダイナムの出店戦略は自民が強い地域と重なる、マルハンはそうではない
次のモデルが暴いたのは、さらに生々しい企業名だ。
ダイナムの店舗数(β=2.56, p<0.01) は、自民党得票率に直結する。
一方、マルハンの店舗数は有意な影響なし。
なぜか? 理由は明快だ。
・ダイナムは「ゆったり館」など、地方密着型の店舗を戦略的に展開。農村・中小都市を拠点に“保守票の象徴”として機能。ダイナムが集票で役割を果たしているかどうかはこの結果からはわからない。
・マルハンは渋谷・新宿など大都市圏に展開。多様な人種・思想が交錯する都市の中では、特定政党に票を束ねる効果は希薄。
つまり、ダイナムの出店戦略そのものが“自民票の注力地域”と重なっている可能性が浮かび上がった。このことから、ダイナム自体が今回のような選挙に関わっていたとは考えにくいだろう。
◾️5.3 限界と“火薬庫”としての未来
もちろん本研究にも限界はある。
・データは2022年参院選を参照したもので、2025年選挙のものではない。
・パチンコデータは2016年、社会経済データは2024年と時間のズレもある。
・空間的自己相関(九州・東北・北関東の“地域共鳴”)を完全に制御できていない。
しかし、これらの限界を差し引いても結論は不気味だ。
パチンコホールの地図は、そのまま自民党の票田地図に重なっている。
そして今回の阿部恭久候補を巡る“業界幹部逮捕劇”が示すように、この地図は単なる統計の偶然ではなく、現実に“票を動かす装置”として稼働していた疑いが濃厚だ。(そもそも統計的には偶然を排除できるように、他の要因を制御変数として入れ込んでいる)