自衛隊に参政党の影? 圧倒的組織票を抱えていた「ヒゲの隊長」が2025年参議院選挙で落選した理由(2)【林直人】

◆自衛官が自民党を見放した日――崩壊する戦後最大の権力同盟
1. 序論:崩れ落ちた“永遠の安定政権”
2025年7月――第27回参議院議員通常選挙。
戦後日本を支えてきた自民党・公明党連立政権が、ついに参院で過半数を失った。これは単なる「議席数の変動」ではない。長年“磐石”と称された権力基盤が音を立てて崩壊し、日本の立法プロセスと政策決定の屋台骨そのものが揺らぎ始めた瞬間である。
政治は突如として流動化し、何が起こるか誰も読めない時代に突入した。
だが、その震源地は意外な場所にあった――日本の安全保障を支える自衛隊の若年層、その投票行動である。
1.2 自衛隊票が示した“裏切り”のサイン
「保守の牙城」――自衛官票はそう呼ばれてきた。戦後一貫して自民党を支え続けてきた層である。しかし2025年、この鉄壁の支持構造に大きな“ヒビ”が入った。
若い自衛官たちがこぞって票を投じたのは、既存政治を真っ向から否定する新興勢力・参政党であった。かつて学術的に“興味深い逸話”と片づけられてきた現象が、今や日本政治の根幹を揺さぶる“決定的な証拠”へと変貌したのだ。
もし国防の担い手が保守本流に背を向けるとすれば――それは単なる票の動きではなく、国家の安全保障そのものが根底から揺らいでいることを意味する。
1.3 離反は「抗議」か、それとも「政権崩壊の引き金」か
2022年当時、自衛官票の一部が参政党へ流れたことは“抗議票”と解釈された。安定多数を維持する自民党にとって、それは痛くもかゆくもない、ただの“ガス抜き”に過ぎなかった。
しかし2025年、状況は一変した。連立与党は過半数を失い、政権の弱体化は誰の目にも明らかとなった。この文脈で参政党に投じられた一票は、もはや無害な抗議ではない。それは、政権の崩壊に加担する“刃”であり、防衛予算や安全保障法案を握り潰す可能性を孕んだ“決定的な選択”なのだ。
もし本稿の分析が示すように、自衛官票の参政党シフトが統計的に裏付けられるならば――それは日本政治における“禁断の真実”を浮かび上がらせる。すなわち、自衛隊という国家の守護者が、自民党という戦後最大の権力政党を見限り、その支配体制を解体する側に回った、という衝撃の事実である。