自国を守るためにできることとは? 清水幾太郎著『日本よ 国家たれ 核の選択』を読む【緒形圭子】
緒形圭子「視点が変わる読書」第21回 『日本よ国家たれ 核の選択』清水幾太郎 著

◾️戦後日本という国の成り立ち
これは日本という国の成り立ちを考えるのに重要なことである。なのに今まで知らなかったのは教科書に書かれていなかったからであり、そこには明らかなアメリカの意図が感じられる。戦前の日本が天皇という存在を中心にかくも強く結束していた国であったという認識を後世の日本人に持たせたくなかったのではないだろうか。
いやしかし、私が無知なだけで、他の人は普通に知っているのかもしれないと、周囲のベテラン編集者10人ほどに聞いてみた。
「ポツダム宣言を受諾した後、日本の軍隊がすぐに解散できたのは何故か?」
驚くべきことに、正しく答えられたのは、たった一人だった。
私は自分が今まで学び認識してきた自国の歴史というものがかなりあやふやなものであることを思い知らされたのである。

清水幾太郎は日本の社会学者の泰斗にして、戦前、戦中、戦後を通して活躍したジャーナリストである。明治40年、東京市日本橋の竹屋の家に生まれた。祖父の代まで旗本であったが、明治維新後の近代化の中で家が没落したという。父親は竹屋をやめて本所区柳島横川町で洋品雑貨店を始めたが、関東大震災で一家は無一文となる。
家庭が窮する中、清水は医者を志して独協中学に入るも、途中から社会学に興味を持ち、旧制東京高校から東京帝国大学文学部社会学科に進んだ。卒業後は大学の研究室に副手としての職を得たが、大学の学問の空疎に幻滅して大学を去り、読売新聞の論説委員となって、ジャーナリストとして旺盛な執筆活動を行った。
戦後は二十世紀研究所の所長となり、また学習院大学の教授を務め、社会学者としての存在感を示す一方、60年代安保闘争の時は反対運動のリーダーとして活躍。平和と反戦の社会運動の旗手として絶大な影響力を誇るようになる。ところが日米安全保障条約の改定が強行されると、安保闘争を敗北とみなし、平和運動から手を引く。その後、清水研究室を主宰し、大衆のレジャー研究を行ったり、天皇制維持を唱え、君が代・日の丸運動の先頭に立つようになったため、世間から「右旋回」と批判された。
『日本よ国家たれ 核の選択』は、そうした経緯を持つ清水幾太郎が、とうとう核武装にまで言及したということで、大きな注目を集めたのである。
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✴︎「福田氏は、保守派の論客であるが
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✴︎「福田氏が考えていたのは、全ての人間に備わった
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✴︎「『真剣な問に対して、責任を持って答えるとはどういうことか』について、
私は福田氏から多くを学んでいる。
第一部 日本とは何か
日本の家郷
「内なる近代」の超克
日本人であるということ
乃木希典
保田與重郎と昭和の御代
第二部 ナショナリズムとは何か
なぜ日本人はかくも幼稚になったのか
この国の仇
余は如何にしてナショナリストとなりし乎
大丈夫な日本
【解説一】西部邁 【解説二】久世光彦 【解説三】角川春樹
本書解説 佐藤優
「福田和也氏の普遍主義とアナーキズム」
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◆第二部「批評とは何か」
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「刃物のような批評眼、圧死するほどの知の埋蔵量。
彼の登場は文壇的“事件"であり、圧倒的“天才"かつ“天災"であった。
これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」