自国を守るためにできることとは? 清水幾太郎著『日本よ 国家たれ 核の選択』を読む【緒形圭子】
緒形圭子「視点が変わる読書」第21回 『日本よ国家たれ 核の選択』清水幾太郎 著
何が起きるか予測がつかない。これまでのやり方が通用しない。そんな時代だからこそ、硬直してしまいがちなアタマを柔らかくしてみよう。あなたの人生が変わるきっかけになるかもしれない・・・そんな本がここにあります。「視点が変わる読書」連載第21回。自国を守るためにできることとは? 清水幾太郎著『日本よ 国家たれ 核の選択』を紹介します。

「視点が変わる読書」第21回
自国を守るためにできることとは?
◾️日本の軍隊はなぜすぐに解散できたのか?
「昭和二十年八月、日本の敗北によって戦争が終わってから、もう三十五年になる」
清水幾太郎著『日本よ 国家たれ 核の選択』の冒頭の一行だ。
今年は戦後80年だから、今から45年前の1980年にこの本は刊行された。当時私は高校一年生。のほほんと暮らしていたので本が刊行されたことすら知らなかったが、戦後最大のタブーである「日本の核武装」に挑んだとして、大きな騒動になったらしい。
清水の論説は単行本として刊行される前にオピニオン誌『諸君!』に掲載された。やはり当時高校生だった、思想史家の片山杜秀は新聞に載った雑誌広告のタイトルを見て、平和憲法を有するこの国で、進歩的知識人の代表ともされる清水が核武装を唱えることに衝撃を受け、『諸君!』を買いに書店へ走ったが、どの書店も売り切れで買うのに苦労したという。
私が『日本よ 国家たれ 核の選択』の存在を知ったのは、今年の2月だった。編集の仕事でお世話になった方がこの本の刊行に関わったという話を聞き、アマゾンで買って読んだのだ。ちなみに古書価は結構高く3,044円だったが、今アマゾンで検索したら、12,800円~! になっていた。「日本の古本屋」のサイトでも、4,857円~である。今でも古書として価値の高い本なのだ。
私は日本の軍事問題に特別な関心を抱いているわけではない。北朝鮮から飛んでくるミサイルは怖いし、台湾有事になったら日本はどうなるのだろう、もしも日本が危うい状況に陥ったらアメリカは助けてくれるのだろうかなど、不安はあるけれど、だからといってそれについて深く考えることもなく、行動を起こすこともなく、現在に至っている。
そんな私が、『日本よ国家たれ 核の選択』の最初の1頁から衝撃を受けることになった。
そこにはポツダム宣言を受諾した日本がその後すぐに武装解除できた理由が書かれていた。
「ポツダム宣言」には「日本国軍隊は完全に武装解除せられ……」とあるとはいえ、アメリカは、受諾の前日まで死力を尽くして戦っていた日本軍がそうやすやすと解散しないだろうと考えていたという。内外各地で戦闘が続き、さらに多くの血が流されるだろうと危惧していたというのだ。
ところが、受諾から約3か月後の1945年11月30日をもって、大きな問題を生ずることなく日本の陸海軍の解体は完了した。
その答えを清水はこう書く。
「奇跡は、戦後の日本で事毎に非難される『統帥権の独立』によって生じたものである。反対に、戦後の日本で盲目的に賛美されている『シヴィリアン・コントロール』(『文民統制』)の下であったら、奇跡は容易には起らなかっただろう。換言すれば、奇跡は、日本の軍隊が天皇直属の軍隊であり、武装解除の命令が天皇から出たために生じたものである」
ここを読んだ時、私の頭は一瞬動きを止めた(ように感じられた)。この事実を私はこの時初めて認識した。もちろん小学生の頃から、日本がポツダム宣言を受け入れ、その後アメリカの占領下に置かれた事は繰り返し教えられてきた。だから、日本の軍隊はアメリカによって強制的に解体させられたものと思い込んでいたのだが、大元帥である天皇の命令によって軍隊は解体したのだ。
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保守派の論客・福田和也が
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✴︎「私は「保守派の論客」という規定では、
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✴︎「福田氏は、保守派の論客であるが
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✴︎「福田氏が考えていたのは、全ての人間に備わった
責任感ということだったように私には思えてならない。」
✴︎「『真剣な問に対して、責任を持って答えるとはどういうことか』について、
私は福田氏から多くを学んでいる。
第一部 日本とは何か
日本の家郷
「内なる近代」の超克
日本人であるということ
乃木希典
保田與重郎と昭和の御代
第二部 ナショナリズムとは何か
なぜ日本人はかくも幼稚になったのか
この国の仇
余は如何にしてナショナリストとなりし乎
大丈夫な日本
【解説一】西部邁 【解説二】久世光彦 【解説三】角川春樹
本書解説 佐藤優
「福田和也氏の普遍主義とアナーキズム」
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