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人間はもっと「いい加減」に生きるべきである【適菜収】

【連載】厭世的生き方のすすめ! 第10回


時代を鋭く抉ってきた作家・適菜収氏。当サイト「BEST T!MES」の長期連載「だから何度も言ったのに」が大幅加筆修正され、単行本『日本崩  百の兆候』として書籍化された。新連載「厭世的生き方のすすめ」では、狂気にまみれたこのご時世、ハッピーにネガティブな生活を送るためのヒントを紹介する。世の中にうんざりしてる人に「人間はもっと『いい加減』に生きるべきである」と説く適菜氏の連載第10回。そのヒントは「うっかり八兵衛」にあった。


イメージ写真:PIXTA

 

■うっかり八兵衛に学ぶ

 

 私は50を越えてから、ついうっかりしてしまうことが多くなった。ゴミを出す曜日を間違えたり、外で食事をした後、財布にカネが入っていなかったり。外出してしばらくして自宅にスマホを忘れてきたことに気づいたりする。スマホがないと不便だが、一方で少し得した気分にもなる。「今日は夜までスマホから解放されるな」と。いきなりスマホを捨てるのはハードルが高いが、スマホを自宅に置き忘れることが多くなれば、次第にスマホの呪縛から逃れることができる。

   *

 人間は四六時中精神を張り詰めてはいられない。しかし、四六時中精神を弛緩させるのは簡単だ。50を越えたら体も衰えてくるので、弛緩しすぎるくらいでちょうどいい。ゆっくりとうっかり者になっていけば、余裕を持った大人になることができる。

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 「うっかり」は便利な言い訳にもなる。「すみません。うっかりしていました」と言えば、それ以上非難されたり追及されたりもしない。言い訳をしたら「言い訳をするな」と怒られるだろうし、開き直ったら「開き直るなよ」と言われる。しかし、「うっかりしてました」と言えば、「次からは気をつけろよ」くらいしか言われない。せいぜい「あいつはうっかり者だ」という烙印を押されるくらいだ。

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 その烙印は大切にしたほうがいい。うっかり者も板についてくると、好意的に扱われる。ドラマ「水戸黄門」のうっかり八兵衛もそうだ。フィクションとはいえ、水戸光圀の旅の共をしているのだから、うっかりでは許されないはずだが、逆に、うっかりということで愛されている。

   *

 人生楽なきゃ苦もあるさ♪

 世知辛い世の中、うっかり者はもっと評価されていい。

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 もちろん現実には「うっかり」では済まないようなことがある。例えば整備工がうっかりネジを締め忘れて飛行機が墜落したら責任問題になる。だとしたら、うっかり者は責任のある地位から降りたほうがいい。私は責任を取ることができないので、最初から責任がある地位にはつかない。サラリーマンでも管理職につくのを嫌がる人もいる。それでも管理職にさせられるなら、会社を辞めるのも一つの選択肢だと思う。

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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