参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】

Ⅳ. 分析結果の考察:新・有権者ブロックの政治地理学
— 数字が描く“保守票の離反地図” —
◾️4-1 係数の解釈と仮説の検証:票田の“異端化”が可視化された瞬間
Table 2 の結果は明白だ。参議院という異なる選挙アリーナでも、先行研究の核心仮説は揺らがない。
MLM親和性指数(mlm_affinity_index)とNR地理的影響力指数(nr_influence_index)はいずれも、参政党得票率(sanseito_share_2025)とその伸び率(delta_sanseito_share_22_25)に一貫して有意なプラス効果を示す。
例:MLM集積度が 0.75SD 高い自治体は、参政党の得票率が 約0.71pt 高い。
NR影響力も同様に、潜在的コミュニティの濃度が高いほど参政党が伸びるという明確な構図だ。
票の移動仮説を裏付ける証拠も鮮明。モデル(4)では、同じ変数が自民党得票率に有意なマイナスとして現れる。つまり、参政党のプラスが自民党のマイナスに直結している。
クリエンテリズム指数(ldp_clientelism_index)は対照的効果を示す。
参政党モデルではマイナス → 「旧来型利益誘導政治」の強固な地域では参政党が浸透しづらい。
自民党モデルではプラス → 伝統的集票マシンの生存証明。
**交互作用項(MLM×クリエンテリズム)**が突きつけたのは、戦場の精密座標だ。
自民党ネットワークが弱く、かつMLM濃度が高い地域で、参政党の伸びは爆発的になる。
これは単なる価値観の一致ではなく、政治的疎外空間での組織的動員を意味する。
◾️4-2 衆院選と参院選の比較:制度を超えて生き残る支持基盤
衆院の小選挙区・比例併用制と参院の全国比例制という異なる制度下でも、係数の大きさと有意性にほぼ差はない。
これは、支持層が候補者人気ではなく参政党という政党ブランドとイデオロギーに結びついていることを意味する。
選挙制度が変わっても行動パターンは揺らがないーーつまり固定化された有権者ブロックだ。
◾️4-3 ケースファイル #YK-001:福岡県行橋市
福岡県行橋市の2025年参院選比例代表結果:参政党 4,668.7票、自民・国民民主に次ぐ第3位。全国平均を超える高支持率。
背景捜査:
市内に幸福の科学支部、天理教分教会群、倫理研究所法人会が存在。
これらは NR影響力指数の主要構成要素であり、モデルが予測する“高リスク地域”の条件をすべて満たす。
結論:行橋市はモデルの的中例そのものだ。ここでの参政党躍進は偶然でも「風」でもなく、地理的に集積した価値共同体ネットワークの動員結果だった。
マクロの統計パターンが、ミクロの地域現実と完全に一致した瞬間である。
◾️総括:保守政治の静かな内戦が始まった
この分析は、参政党の拡大が「反自民の一時的うねり」ではなく、特定コミュニティが地理的に固まって政治行動を組織化する構造現象であることを示した。
その構造は制度を超えて持続し、自民党の票田の一部を恒常的に侵食していく。
次の選挙戦は、与野党の争いではなくーー保守陣営内部の生存戦争になるだろう。