参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】

Ⅱ. データと分析の枠組み:“票田の設計図”を白日の下に
ーーここから先は、学術用語の皮をかぶった現場検証だ。どの数字が、どの地域で、誰の心を奪ったのかーーパネルデータはすべてを記録している。
◾️2-1 従属変数:票が動いた“痕跡”の押収目録
参院選での参政党と自民党の足取りを、総務省・各選管の公式結果でトレース。面倒で骨の折れる“自治体別の手作業回収”をいとわず、全国スケールで網羅を試みた。
sanseito_share_2022:2022年参院(比例)における参政党の市区町村別得票率(%)
ldp_share_2022:同・自民党の得票率(%)
sanseito_share_2025:2025年参院(比例)参政党の得票率(%)
ldp_share_2025:同・自民党の得票率(%)
delta_sanseito_share_22_25:参政党得票率の変化(22→25年、パーセントポイント)
→ どこで勢いが増幅したかを直撃で可視化する“加速メーター”。
ここまでやるのは執念か狂気かーーだが、再現可能性はこの分野の唯一の通貨だ。
◾️2-2 独立変数および統制変数:見えない同盟を数式で剥ぐ
(1)mlm_affinity_index:MLM親和性指数
“健康食品”“化粧品”“自己啓発・カウンセリング”──JSICで特定産業を抽出し、経済センサス(活動調査)をもとに特化係数(LQ)を市区町村ごとに算出、標準化・合成する。
(式1)
狙い:主流から距離を置く自己啓発/MLM的サブカルチャーの地理的“濃度”を数値化。
(2)nr_influence_index:NR地理的影響力指数
特定の新興宗教団体(幸福の科学・崇教真光・天理教・生長の家・GLA・阿含宗・倫理研究所)の施設所在地を全国収集し、重要度で加重(例:世界総本部=10、支部・道場=1)。市区町村で合計し人口割り。
狙い:地域社会に浸透する価値共同体の“目に見えないインフラ”を数字で炙り出す。
※ 行橋市を用いたケーススタディで、構築プロセスの全工程を解剖。
(3)ldp_clientelism_index:自民党クリエンテリズム指数
公共事業の平均落札率(全国市民オンブズマン連絡会議 等)+建設業従業者比率(経済センサス)を標準化・合成。
狙い:長年の利益誘導ネットワークの“残留指紋”を定量化し、モデルの背後で息づく旧体制の強度を測る。
(4)社会経済的統制変数(e-Stat「社会・人口統計体系」)
population_density(人口密度)
per_capita_income(一人当たり課税対象所得)
aging_rate(高齢化率)
university_graduate_ratio(大卒者比率)
unemployment_rate(失業率)
宣告:交絡因子の逃げ道は塞いだ。“言い訳”は入らない。
◾️2-3 記述統計:分布が語る“偏り”の告白
Table 1 は主要変数の素性を丸裸にする。平均、ばらつき、外れ値──どの地域が“濃い”のかが赤裸々だ。
特に mlm_affinity_index と nr_influence_index の標準偏差が大きい点は決定的。価値共同体とサブカルチャーは均一に広がらない。“塊”で存在し、政治を歪める。
(表1)
