アベガーに殺された安倍晋三と、ジャニーガーに潰されたジャニーズ。その本質は歪んだ世直しごっこである【宝泉薫】「令和の怪談」(7)
「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(7)【宝泉薫】

この暗殺事件については、22年7月配信の拙稿(安倍晋三、死後もなお続くアベガーたちの悪魔化運動と国民的政治家としての特異性)でとりあげた。
ただ、アベガーによる悪魔化運動は、その後の政権も揺るがし続けている。24年10月の衆議院議員選挙における与党の大敗。その決め手となったのが、安倍の死後、明るみになった政治資金パーティー収入をめぐる問題だ。収支報告書への不記載などが発覚したことで「裏金」になっていたのではと指摘され、野党勢力は激しく攻撃した。その対象がもっぱら、安倍派系の政治家だったのである。
この攻撃が与党に対する有権者の感情に負の影響をもたらし、かなりの票が野党へと流れることに。メディアもこの流れに便乗して「裏金議員」などとレッテルを貼り、勧善懲悪的な構図を作って面白おかしく報道した。いわば、アベガーの執念が選挙を動かしたわけだ。
そんな攻撃スタイルは、今も機能している。今年7月の参院選でも、与党は大敗。石破茂首相への批判が自民党のなかからも噴出して「石破おろし」がすぐに実現するかと思われた。が、同時に「石破やめるな」という擁護の声もあがり、それはなぜか、野党側、あるいは反権力側の人たちからのものが目立った。
弁護士の菊間千乃も、そのひとりだ。
「政治とカネの問題は、やっぱり非常に大きいと思う。その人たちが石破さんを批判している構図が、国民からすると、いやいや自分たちがそういうことを言うのかな、というところが、何とも気持ち悪いなという感じがします」
と、ワイドショーで発言。その「問題」がどこまで影響したのかは不明ながら、石破おろしをする側に「お前が言うな」的指摘をしたわけだ。
しかし、これに黙っていられなかったのがジャニーズファンである。なにせ、菊間といえば、フジテレビの女子アナ時代、ジャニーズアイドルの未成年飲酒の現場に同席して謹慎処分になった人。にもかかわらず、ジャニーズ騒動では事務所の対応を批判したため「お前が言うな」的指摘を受けた。
ちなみに彼女は、未成年飲酒の件について、
「会社に行ったら、私だけのせいになっていた」
と、のちにぼやいている。アイドル自身も謹慎させられているわけだが、彼女にはどこかジャニーズへの恨みめいた気持ちもあるのだろう。
そして、石破政権もまた、ある意味、恨みによって成立しているところがある。長年、安倍らに負け続け、党内で野党的立場に甘んじてきた石破がようやく天下をとったわけで、それゆえ、アベガーには好意的に受け入れられた。本人の思惑はさておき、アベガーたちは自分たちのラスボスみたいに彼を持ち上げている印象もあり、そこが「石破やめるな」運動の正体なのではないか。
8月には「戦後80年」についてのメッセージを発表したいとも言っていて、その内容が国益を損なうのではという危惧も囁かれている。
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