その雑誌のタイトルは『Title』【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」18冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」18冊目
2号目以降の特集は、「ブレイク寸前美少女大特集 カワイイ2000」(2000年6月号)、「sports maniaX」(7月号)、「オイシイ韓国」(8月号)、「闘え! バイクメ~ン!!」(9月号)、「MILLITARY FREAKS 気分はもう戦争!?」(10月号)、「クルマが好きで悪かったな!」(11月号)、「ジャンク・ジャンク・レボリューション」(12月号)、「アクション・ムービー観戦ガイド」(2001年1月号)と続く。
創刊号に比べて、テーマが明確でわかりやすい。「ジャンク・ジャンク・レボリューション」はジャンクフードの特集で、アンナミラーズ風の衣装を着た川村亜紀が、お好み焼きや焼き鳥、ハンバーガーなど(の食品サンプル)山盛りのお盆を持った写真が表紙。「sports maniaX」は、巨人・松井秀喜がバットを構えた姿を思いっきりアオリの構図で捉えた写真が目を引く。

そんな新雑誌『Title』で、私はライターとして仕事をしていた。前述のテスト版0号の新宿歌舞伎町深夜サウナルポを皮切りに、「カワイイ2000」の「わらしべ美女図鑑」(美女に「自分より美女」と思う人を紹介してもらう企画)、「クルマが好きで悪かったな!」の「大放談 カルトカーならまかせろ!」(自動車評論家3人とレーシングドライバーによるカルトカー談義)と「ウェルカム トゥ マイ“ルーム”」(こだわりの「個室」としてのカスタムカーとそのオーナー紹介)など。
特集テーマによっては出る幕がないことも多く、上記の記事もメインではなく小ネタ系で2~4ページ程度にすぎない。それとは別に、巻頭の時事コラムコーナー「TNA(タイトル・ニュース・エージェンシー)」で「ニュースの心」という三面記事の行間を読むコラム連載もやっていたが、自称〈タイトル内でもっとも地味な連載〉だった。要するに、雑誌全体から見れば刺身のツマみたいな存在だったのだ。
ところが、そんな私が一躍メインを張った号がある。2001年4月号、特集は「雑誌チュー毒」だ。伏線として同年2月号の「2001:毒書計画」と題した本の特集が好評だったというのがあり、「じゃあ、次は雑誌だ!」となったらしい。
はい、そらもう私の出番ですよ。「編集部美女図鑑」(6p)は候補者を紹介しただけだった気がするものの、「ひと目でわかる! 2001年版 男性誌ポジショニングMAP」+「男性誌“注目”エリア動向チェック」(3p)、「ライバル対決! 雑誌界[仁義なき戦い]」(5p)、「めくるめく専門雑誌の世界」(4p)、「『休刊誌の創刊号』珍品コレクション」(2p)に加え、著名人に雑誌遍歴を聞く「こんな雑誌を読んできた」で松尾スズキ、八谷和彦、瀬名秀明、忌野清志郎の4人を取材した。
文春レベルの大手版元の雑誌で、外部のライターがひとつの特集内でここまでの分量を担当するケースはあんまりないのではないか(知らんけど)。「男性誌“注目”エリア動向チェック」は、クレジットであまりに同じ名前が何度も出てくるのもどうかということで「渋谷路太(しぶや・ろふと)」という「捨てアカ」ならぬ「捨てペンネーム」を使ったほどだ。
「『休刊誌の創刊号』珍品コレクション」で扱った雑誌54冊はすべて私物。というか、コレクターとして自分が登場している。「めくるめく専門雑誌の世界」では、『綱引マガジン』『愛鳩の友』『愛石の友』『月刊むし』『月刊世論調査』『胃と腸』『ナース専科』『月刊食品工場長』『養豚界』『月刊バーコード』など、21誌を紹介した。
「ライバル対決! 雑誌界[仁義なき戦い]」は、企画としては【9冊目】の『GON!』でやった「仁義なきパクリ雑誌大戦争!」の焼き直しだが、『GON!』と『Title』では扱う雑誌がやはり違う。勝手に言いっぱなしの『GON!』とは違い、各誌の編集長に正式に取材(アンケート)依頼もした。
マッチメイクは、『AERA』vs『読売ウィークリー』、『Number』vs『SPORTS Year!』、『男の隠れ家』vs『一個人』、『噂の眞相』vs『噂』、『ダークサイドJAPAN』vs『裏モノJAPAN』、『すてきな奥さん』vs『おはよう奥さん』、『Tokyo Walker』vs『TOKYO1週間』、『NAVI』vs『ENGINE』、『性生活報告』vs『性生活白書』の全9戦。ツテをたどって編集部員に聞いた裏話も含む(やや皮肉っぽい)解説は、我ながらよくできている。

編集長への質問項目には「先方の雑誌についてライバル意識はお持ちですか?」「先方の雑誌に対するご意見、ご感想を」というのもあり、その回答も味わい深い。
『AERA』がライバル意識を〈ほんの少しだけある〉と答えたのに対して『読売ウィークリー』は〈ありません〉。そのくせ『AERA』について〈恵まれた環境での週刊誌作りに敬服しています〉と妬みだか嫌みだかわからないことを言う。『TOKYO1週間』が〈向うは(ライバル意識を)もってないかもしれませんが、ウチはギンギンに意識してます〉と言うのに、『Tokyo Walker』は〈隔週になってしまうとの噂を聞き、残念です〉と余裕の構え。