2025年参院選、いかがわしい政治屋が跋扈する現代日本の混乱を夏目漱石は予言していた(後編)【近田春夫×適菜収】
【近田春夫×適菜収】新連載「言葉とハサミは使いよう」第7回
鋭い時事批評が人気の作家適菜収氏。なぜ彼は時事批評をやめ、引きこもろうとしているのか? 「バズらせる」「ハックする」そんな薄汚い言葉があふれかえる現代日本。政党の皮をかぶったカルトなのか、遵法闘争に見せかけた脱法なのか。2025年参院選に向けて、なにをどのように考えればいいのか。20世紀末の時点で、音楽はいずれタダになると予言していた音楽家近田春夫氏と、近代大衆社会の末期症状を描き出した『日本崩壊 百の兆候』(KKベストセラーズ)が絶賛発売中の作家適菜氏による異色LINE対談。連載「言葉とハサミは使いよう」第7回。

■赤尾敏と田中清玄
近田:N党や参政党を見ていると、昔の赤尾敏の愛国党とか、今考えると純粋だったよね。
適菜:赤尾の姪の赤尾由美は参政党にかかわっているんです。もう、党からいなくなりましたが。
近田:小学生のころ、よく数寄屋橋で赤尾敏が演説してるの見たなぁ。
適菜:赤尾敏は親米右翼ですよね。この姪は反グロ―バリズムみたいですが。
近田:そうなんだぁ。
適菜:当時、赤尾敏はどんなことを言っていたんですか?
近田:それはもう忘れたけど、ただ名調子なのよ。話芸としてユーモアとかもあって。風物詩的なものだったなぁ。その頃電車に乗ると傷痍軍人が必ずいたなぁ。そのこととなんかリンクする思い出だね。
適菜:名調子とか話芸とかそういうのは、人間の格として重要ですね。右翼だろうが、左翼だろうが。田中清玄も人間としては面白いし。
近田:うん。

適菜:私の好きな話があって、今手元に資料がなくて正確ではないかもしれませんが、田中清玄が銃撃されたとき、何発か実弾を食らっているのに、狙撃犯に向かっていき、組み伏せているんですよね。面白すぎます。
近田:田中清玄は肝が据わってるからね。政治信条云々の前に認めざるを得ないところあるよ。
適菜:私の飲み友達というか酒飲みの先輩(元大学教授)が、昔、田中清玄の息子の家庭教師をやっており、多分、その息子が早稲田大学の総長になったんです。
近田:ひぇ〜!
適菜:次男の田中愛治さんです。もしかしたら、勉強を教えたのは田中清玄の長男なのかもしれませんが、細かいことを聞こうと思っているうちに、体調を壊されたようで、酒場でみかけなくなりました。
近田:それもなんかいい話だねぇ。
適菜:あっ。今、ネットで検索したら、先ほどの話が出てきました。ここに貼っておきますね。
「玄関を出ようとしたところを、いきなり腹を撃たれたんです。そこでひるんだら本当に殺されると思ったから、向かって行って相手を倒した。銃口を肘に押し付けて首を絞めようとも思ったが、こっちは空手をやっていたし、殺してしまったら背後関係も分からなくなってしまう。それで殺さずに、まずピストルを奪おうとした。相手も必死でした。ピストルをとられたら、逆に殺されると思ったのでしょう。それでもう一発、肘を撃たれました。その後、やっこさんは東京会館に逃げ込もうとしたのを、こっちは追いかけていって、ドアのところに挟むようにしてつかまえてやろうとしたが、そのときドアの隙間から三発目を撃たれたのが、腎臓にまで届いた」(「田中清玄自伝」)
近田:すげ〜。

適菜:岸信介や児玉誉士夫とかと戦っていたわけだから、半端ではないですよね。友達がハイエクとか、格が違います。「俺の友達ハイエクなんだけどさ」って普通はありえないですよね。当時の日本人で。
近田:ノーベル経済学賞の受賞者だよねぇ。
適菜:そうです。新自由主義の大元みたいに言われていますが、保守主義的な側面も強いです。自生的秩序の重視とか。