『散歩の達人』の歩き方【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」16冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」16冊目
メジャー展開しながら、マニア視点の小技も効いている。それが近年の『散歩の達人』のイメージだ。ピエール瀧、能町みね子、かつしかけいた、村瀬秀信といった連載陣も絶妙。路上観察の最前線を味わえる「COLLECTOR’S COLLECTION」もいい。松重豊と甲本ヒロトが表紙の2025年1月号では、鉄塔を真下から見上げた「結界写真」が紹介されていて、その幾何学的美しさにめまいがする。

こうした情報誌は、今はもう網羅性や検索性の点でインターネットに敵わない。ならば、勝負すべきは独自の視点や切り口、つまりは雑誌としての個性の部分だ。その点、『散歩の達人』はしっかりキャラが立っている。『Tokyo Walker』はもうないが、『散歩の達人』はウェブと連動しながら、まだ頑張っている。
来年(2026年)は創刊30周年。雑誌業界の状況は相変わらず厳しいが、おそらく無事に節目の年を迎えるだろう。願わくば、適度なマニアックさを保ちつつ40周年をめざしていただきたい。
文:新保信長