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『散歩の達人』の歩き方【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」16冊目

新保信長「体験的雑誌クロニクル」16冊目

 

 メジャー展開しながら、マニア視点の小技も効いている。それが近年の『散歩の達人』のイメージだ。ピエール瀧、能町みね子、かつしかけいた、村瀬秀信といった連載陣も絶妙。路上観察の最前線を味わえる「COLLECTOR’S COLLECTION」もいい。松重豊と甲本ヒロトが表紙の2025年1月号では、鉄塔を真下から見上げた「結界写真」が紹介されていて、その幾何学的美しさにめまいがする。

 

『散歩の達人』(交通新聞社)2025年1月号表紙と連載「COLLECTOR’S COLLECTION」(p112-113)より

 

 こうした情報誌は、今はもう網羅性や検索性の点でインターネットに敵わない。ならば、勝負すべきは独自の視点や切り口、つまりは雑誌としての個性の部分だ。その点、『散歩の達人』はしっかりキャラが立っている。『Tokyo Walker』はもうないが、『散歩の達人』はウェブと連動しながら、まだ頑張っている。

 来年(2026年)は創刊30周年。雑誌業界の状況は相変わらず厳しいが、おそらく無事に節目の年を迎えるだろう。願わくば、適度なマニアックさを保ちつつ40周年をめざしていただきたい。

 

文:新保信長

 

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新保信長

しんぼ のぶなが

流しの編集者&ライター

1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。単行本やムックの編集・執筆を手がける。「南信長」名義でマンガ解説も。著書に『国歌斉唱♪――「君が代」と世界の国歌はどう違う?』『虎バカ本の世界』『字が汚い!』『声が通らない!』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。新刊『漫画家の自画像』(左右社)が絶賛発売中です!

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