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意外な絶景路線、樽見鉄道

紅葉・黄葉がまぶしい渓谷を疾る

 谷汲口(たにぐみぐち)は、谷汲山華厳寺の最寄り駅でバスに乗り換える。名鉄谷汲線なきあと、鉄道を使うとしたら樽見鉄道利用しか選択肢はない。ホームの傍には、かつて使われた茶塗りの旧型客車が1両保存されていた。

 

 神海(こうみ)は、国鉄樽見線時代の終着駅だった(旧駅名は美濃神海)。樽見鉄道となってから、現在の終点樽見まで延伸された。開業が1989年と比較的新しいので、延伸区間の線路状態はよく、カーブも緩やかでスピードも心なしか上がったようだ。その代わりトンネルも多くなる。

 

 樽見の一つ手前の水鳥(みどり)は、1891年の濃尾地震で生じた根尾谷断層が間近にある。駅から2分程の所には、地震断層観察館があり、帰りに立ち寄ったけれど、断層のずれを観察でき、一見の価値のある施設だ。高いところにある展望台からは、断層の観察のみならず、樽見鉄道のレールバスが走るのもよく見え、思わぬ撮影スポットだった。

終点・樽見駅に到着した列車

 水鳥を出て長いトンネルを抜けると終点の樽見だ。長いホームに、1両だけのレールバスが停車し、15分程で折り返して行った。日本三大桜の一つに数えられる薄墨桜が満開の頃は賑わうのであろうが、シーズンオフの午後遅い時間であったためか、駅周辺は閑散としていた。曇り空であったため、山々に囲まれた周囲は、すぐに薄暗くなり肌寒い。まもなくやってきた、送迎バスでうすずみ温泉へと向かい、冷えたからだを温めた。

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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