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意外な絶景路線、樽見鉄道

紅葉・黄葉がまぶしい渓谷を疾る

 JR東海道本線の大垣(岐阜県)から北へ延びる第3セクターの樽見鉄道に乗ってみた。単行(1両だけ)のディーゼルカー(樽見鉄道では「このレールバスは、・・・」と案内放送していた)は、しばらく名古屋方面へ向かう東海道本線と並走したのち、東大垣駅付近で分かれ、揖斐川を渡って進路を北に定める。

樽見鉄道のレールバス(水鳥駅にて)

 

 

柿畑の脇を走る

 

 乗ったのが11月初旬だったので、線路の両側の畑には柿がたわわに実っていた。レールバスは、ことんことんとリズムを刻みながら、広々とした田園地帯を快走する。

 

 十九条(じゅうくじょう)、北方真桑(きたがたまくわ)といった個性的な駅名が続き、その次にモレラ岐阜という意味不明な名前の駅に停車した。よく見ると、ホームから少し離れたところに同名のかなり大きなショッピングモールがある。買い物客の便宜を図って10年ほど前の商業施設オープンと同時に新設されたものだ。買い物袋を持った女性が何人か乗ってきた。

本巣駅で上下列車の行き違いがある

 大垣から30分程で本巣(もとす)に到着。樽見鉄道のほぼ中間にある駅で、車両基地と鉄道の本社もある要となる駅である。途中下車して、車両基地見学と運転体験ツアーに参加したのだが、詳細は本稿では省略する。

 

 本巣駅の近くにはセメント工場があり、かつてはセメントを出荷する貨物列車が運転され、樽見鉄道の経営を支えていた。しかし、2006年に貨物列車が廃止となり、広大な本巣駅構内も寂しくなり、その後は地元客、観光客の輸送に頼っている。当時は、貨物列車用のディーゼル機関車が牽引する通学用の客車列車も走っていて、バラエティに富んだ鉄道路線だった。その頃に訪問できなかったのは、返す返すも残念である。

車窓から見た渓谷

 織部を過ぎると、線路の両側には山が迫ってくる。揖斐川水系の根尾川が寄り添い、レールバスは渓谷に沿って走る。紅葉、黄葉も見事で絶景が続く。何度も根尾川を渡り、渓谷は右、左と目まぐるしく移り変わる。

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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