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郵政民営化で“巨大なブラック企業”が爆誕!内部では「局長会」なる組織が睨みを効かせ…問題点を記者が解説

『ブラック郵便局』著者・宮崎拓朗氏インタビュー

▲現場が悲鳴を上げてもブラック体質のままの郵便局。そこまでして利益追求をする理由はなんなのだろうか 写真:筆者撮影

現在、日本郵政グループの問題が大きく報じられている。過剰なノルマから顧客へ詐欺的な行為を働く、あるいは自爆営業に手を出す局員の存在が明らかに。また目標未達をとがめられ、局員が自ら命を絶つという痛ましい事件も起きた。こうした問題を紙面や著書『ブラック郵便局』(新潮社)で追及してきた、西日本新聞記者の宮崎拓朗氏は、日本郵政グループには一般的な民間企業とは違った問題点があると指摘する。

今回は宮崎氏ご本人に、日本郵政グループがブラック体質になった理由や、構造的な問題を解決するためにはどうしたらいいのかを聞いてきた。


■郵政民営化しても郵便局数は変わっていない

 

——『ブラック郵便局』を読んだ時に上から下までブラック企業的な現場で非常に驚かされました。どうしてこんな内情になってしまったのでしょう。

宮崎拓朗氏(以下宮崎) 事態が悪化したきっかけの一つは、郵政が民営化したことだと思います。それまでは国や公社が運営していましたが、民営化してそれまで以上に収益確保が求められるようになりました。

 民営化した当時、郵便局は全国に2万4千ほどあったのですが、今もほぼ同じ数が残っています。この規模を維持するためには、年間1兆円ほどの費用が必要です。そのため、過剰なノルマが課されるようになり、長年お付き合いがあったお年寄りを騙すような保険営業などが行われてしまったのだと思います。

——民営化当時、郵便局がモデルにしたような会社はあったのでしょうか。

宮崎 他の銀行や保険会社とは違った事情があります。一般の企業なら、売上が伸びなければ支店の統廃合などのリストラをしますよね。でも、郵便局は業績が悪い局を廃止したり、統合したりすることは簡単ではありません。法律の中で、郵便局が取り扱う郵便、貯金、保険事業は「ユニバーサルサービス」と位置づけられていて、全国一律に届けるように義務付けられているからです。

 そのため地方の局の統廃合を簡単にはできないという足かせがあるのです。さらに「全国郵便局長会」という組織が、郵便局の統廃合に反対しているのも状況を難しくしている要因の一つです。局長会の政治力は非常に強く、組織内候補を擁立するなど政治的な活動を積極的に行っています。自民党の国会議員に働きかけ、局数維持などの要望を通すために活動しています。

 こうした背景があり、民営化当初から郵便局数はほとんど減っていません。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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