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甲子園優勝校の監督が現職の小学校教諭とは!? 慶應高校の選手たちから見えてくる「主体的・対話的な深い学び」【西岡正樹】

第105回全国高校野球選手権大会で優勝した慶応高校の森林貴彦監督

 

◾️「甲子園優勝校の監督は現職小学校教師」という驚き

 

 慶應高校が夏の甲子園で107年ぶりに優勝しました。その歓喜を報道する新聞記事の中に、私はもう1つの驚きを見つけました。それは、優勝した慶應高校の森林監督が慶應幼稚舎(小学校)の教諭だというのです。現在も3年生を担任しているというではありませんか。

 巷の公立小学校の教師は、「働き方改革だ」「公立学校はブラックだ」と言われるように、追い詰められた環境の中で仕事をしていますが、森林監督は小学校の教師をしながら慶應高校野球部の監督をし、尚且つ、甲子園で優勝してしまうという離れ業までやってのけたのです。その点に焦点を当て、その詳細を報道している記事を私は目にしていませんが、多くの現職小学校教師は、その事実を、驚きを持って受け止めたにちがいありません。

 そこで、森林監督(選手たちは監督と呼ばず、「森林さん」と呼ぶ)の経歴を少し調べてみますと、森林さんは慶應大学卒業後NTTに入社し3年後に退職。それから筑波大学において教員免許を取得。さらに修士課程で「コーチ論」を学んだということが分かりました。そして現在、慶應幼稚舎の体育教師として3学年のクラス担任をし、また、慶應高校の野球部監督をしています。

 公立小学校の学級担任は多くの教科を担当しているので、毎日、その準備や授業後の採点や評価に追われ、その作業に費やされる時間は膨大なものになりますが、専科であれば、その大変さは異なるものの、準備にかける時間は圧倒的に少なくなるのではないでしょうか。「だから、高校の野球部の監督もできる」という簡単な話ではなく、小学生と高校生という年齢的に離れている児童生徒を、全く異なる環境の中で毎日指導する難しさは、私には入り込めない境地です。

 私も45年前に、初めて赴任した小学校で、その学校の在校生を中心にした少年サッカークラブを立ち上げ、長い間コーチと教師の二つの役割を同時に担っていましたが、その面白さや大変さは私なりに分かります。しかし、森林さんの担っている役割とは大きな違いがあり、その面白さも大変さも似て非なるものがあるのではないかと思っています。

 

◾️失敗を失敗で終わらせず「成長の機会」にする

 

 甲子園優勝後、朝日新聞の記事「甲子園Vへの軌跡たどる(上)」を読んでいる時、次のような文が目に止まり、私の心がざわつきました。

 「『失敗』を『失敗』に終わらせず、『経験』と捉えて成長に変える。『大舞台で野球をすることが成長につながる』『負けたら終わり』の試合さえ、成長の機会にした。」(森林監督)

 私はすぐに「自分が監督だったら」と想像してみました。甲子園にようやくたどり着き、さらにその頂点、優勝することをめざしているのです。負けたら終わりです。そんな試合で、それも甲子園で、失敗を失敗で終わらせず「成長の機会」として選手に新たな場を与えられるだろうか。いやできません。でも、小学校の教師として子どもたちを見ている気持ちになれば分かるような気もしますが、森林さんがそのように実践したことがまず驚きです。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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