実際のところ、米国が本来脅威と考えるべき中国経済の強みは、為替操作や製造業の輸出力ではなく、中国企業の研究開発(R&D)分野への旺盛な投資だといわれている。ゴールドマンサックスのリポートによれば、中国の通信国有大手は企業総売り上げの15%をR&Dに投入している。

こういった中国サイドの専門家の考えを総合すると、トランプ政権から一時的に経済圧力を受けたとしても、当面を耐え忍び、トランプ政権が内政改革に神経を注いでいる間にできるアジア・太平洋地域での権力の真空状態に中国がうまく入り込みたい、というところだろう。中国はそうして中米G2時代への道を切り開きたいわけだ。

 

ただ、こうした中国の期待がそのままうまくいくか、というと、「中国共産党はトランプ政権、米国民主主義の本質をまだ理解していない」という意見もある。選挙前からトランプ政権ブレーンに接触している在米華人民主活動家によれば「トランプ自身は中国や国際社会の現状に対して無知であるが、そのブレーンは伝統的共和党の常識を持った優秀な人たちである。とくに、アジア、南シナ海から米軍プレゼンスが後退するという考えは中国の希望にすぎない」とみる。

むしろトランプがスローガンとしていた「強いアメリカ回帰」を実現するとすれば、南シナ海で緊張はもっと高まる、という見方を新浪軍事サイトは伝えている。また米国が本気で中国に貿易戦争を仕掛ければ、経済上の紛争は外交・軍事上の紛争につながりやすい。強い米国を演出するために、中国の“妖魔化”喧伝を経済、外交上で行う可能性もある。

このほか、北朝鮮、ロシアなどその他周辺の国際環境の要因もあるので、実際のところ、中国当局自身もトランプ政権の方向性を見定めてはいない。だからこそ、中国当局は選挙前から在米華人を通じてトランプ周辺に取り入り、その政策の方向性に影響力を持とうと努力もしている。一部ネットメディアで流れる「トランプは米国を混乱させるために中国が送り込んだスパイだ」という言説は冗談だとしても、従来民主党支持であった在米華人団体の少なからずがトランプ支持に回り、かなりの資金援助もしたことが、トランプ当選後の反トランプデモの攻撃の矛先がチャイナタウンに向かった理由でもあろう。

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