三つ目はトランプの本質は「打交道(取り引き、駆け引き)」ができるビジネスマンだとみられている。つまり、信念や理想で動くのではなく、利害で判断して行動する。とくに西側的な自由や人権といった価値観を振り回して、経済的政治的利益を損なうような真似はしない。中国サイドはフィリピン大統領ドゥテルテもこのタイプであると考え、接近してきた。

もちろんトランプは選挙運動中には米国の経済利益のために、中国に対し関税の引き上げや為替操作国認定を行うなどと言っており、あたかも中国に対し経済貿易戦争を仕掛けかねないような印象も持たれるが、「彼は物わかりのいい人間だ。もし(対中経貿戦争が)米国の利益を損なうとわかれば、その政策を調整してくるだろう。恐れることはない。一、二年しのげば、必ずその過程で、条件が成熟し、対立は緩和される」(現代国際関係研究院米国研究所長・達巍、環球時報)といった楽観論が少なくない。

また、トランプの資金的バックであるトーマス・バラックの運営するコロニー・キャピタルは2004年から中国に積極的投資を行っている。またトランプホテルチェーンの中国展開の話も進められている。このことから、米国も中国経済の破綻は困るのだという見方が楽観論の根拠だ。

実際、トランプ政権の安全保障問題の顧問となるジェームズ・ウルジーは香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポスト紙に「オバマ政権がAIIB(アジアインフラ銀行)への参加を見送ったことは戦略的誤りであった」と語り、習近平政権の「一帯一路構想(現代版シルクロード構想)」に対するトランプ政権の反応は「ずっと温かな」ものになる、としている。ちなみにウルジーは今年2月にも、中国の専門家たちとフェニックステレビの討論番組に出演、このときに、AIIBやシルクロード構想への参加にいわゆる敷居はない、との説得を受けていた。

「一帯一路構想」は、ありていにいえば、中華経済圏のアジア、ヨーロッパに向けた拡大、中華グローバリズム戦略の一環であるから、それを「温かな」反応というなら、オバマ政権が頑として抵抗していた米国が中華グローバリズムと世界を二分するG2時代構想に対して、トランプ政権は受け入れる用意があるのではないか、と中国側が期待しても不思議ではない。

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