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「東と西の戦国関連展」

季節と時節でつづる戦国おりおり 第256回

 食欲の秋、芸術の秋であります。大いに食べ、大いに観て、大いに聴きましょう。そして、心もお腹も満ちたところで、文化の秋と参りましょう。東西あちらこちらの博物館などで秋季展などの真っ盛りです。

 

 そこで、今回紹介するのはまず島根県松江市の松江歴史館にて開催中の「特別展 松江藩主松平直政の生涯」。直政は徳川家康の次男・結城秀康の三男。秀康が豊臣秀吉の養子にもなった事から、彼は家康と秀吉ふたりの孫にあたるわけです。

 今回の展示で目玉になるのは、直政も従軍した大坂の陣で歴史に残る戦いを繰り広げた「大坂 真田丸」図。最近発見されたものですが、左に掲げる写真の図録にもしっかり収録されています。浅野文庫所蔵諸国古城之図の「摂津 真田丸図」に類似していますが、堀幅や出丸の広さに具体的数値が入れられており、より詳細です。11月6日まで。http://matsu-reki.jp/

 

 そしてもう一カ所、東京都中央区日本橋の三井記念美術館では「特別展 松島 瑞巌寺と伊達政宗」開催中。

 こちらはタイトル通り瑞巌寺所蔵の美術品や政宗関連の史料などを公開。いやはや、先日の岡山県立美術館の「伊達政宗と仙台藩」展といい、日本人は本当に政宗さんが好きなんですよねぇ。

 今回の展示には政宗ゆかりのおなじみの品々が数多く出されておりますが、今回ふと気付いて面白く感じたのは、「瑞巌寺本堂欄間額『松島方丈記』」。政宗の教育係をつとめたことで有名な虎哉宗乙が書いたものなのですが、その文中に
「所冀、帰扶桑六十州於掌中」
 とあるのです。

(政宗が)日本全土を手中に収める事を念願する、という意味で、これが慶長15年(1610)という関ヶ原合戦から大坂陣への流れの中、政宗が慶長遣欧使節を派遣する直前に書かれたという事の意味を考えると、その大胆さとともに政宗の野望の凄みにまで想像をめぐらせる事ができそうです。

 隻眼の政宗像に「いろいろ企んでました?」と問いかけてみましょう。11月13日まで。http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
 

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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