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おもしろ列車で行く富士急の旅

旧国鉄形から4月デビューの新型まで、乗り鉄三昧!

旧国鉄色特急電車を使用した快速富士山

 旧国鉄形特急電車を使用する快速「富士山」という臨時列車が新宿駅から富士急の河口湖駅まで直通運転されるというので、乗ってみることにした。運転は、とりあえず7月から9月までの毎週金曜日である。土日にはホリデー快速「富士山」が走るので、それを拡大して金曜にも運行しようと考えたようだ。駅で貰ったチラシには、白地に窓周りがライトブルーの塗装の車体が映っていたので、まあそんなものかと思い、指定券を買って新宿駅へ向かった。新宿駅のホームに入ってきた電車を見て驚いた。189形のオリジナル塗装である赤とベージュの塗り分けの車両だったからだ。まるで国鉄時代の中央線特急のようである。

 ほどほどの混み具合で出発。私の隣の席は空いていた。海外からの観光客に人気の富士山だけあって、車内には外国人の姿が目についた。立川、八王子と中央線を順調に走り、大月では中央線のホームに停車。発車すると、いよいよ富士急線に乗り入れる。

 複線の中央線と違って単線であるし、カーブも多く、勾配もきついせいか、列車はスピードを落としてのんびりと進む。もっとも、それがローカル線らしくて楽しい。リニア実験線の高架橋をくぐり抜け、都留文科大学前駅に停まる。三つ峠駅を通過すると、富士急の車窓のハイライトともいうべき富士山が左手に見えてくるはずだが、あいにくこの日はすっぽりと雲に覆われてほとんど見えなかった。残念である。

富士山ビュー特急

富士山ビュー特急車内

 下吉田駅構内に停まっているブルートレインの客車を見つつ、しばらくすると富士山駅到着。ここでしばらく停車したあと、進行方向が逆になって出発し、富士急ハイランド駅に停まれば、あっけなく河口湖駅に到着した。
 フリーきっぷを持っていたし、何回も来ている河口湖なので、今回は乗り鉄三昧に徹し、「富士山ビュー特急」で折り返す。2016年4月にデビューしたばかりの新顔である。車両見学会で撮影しただけだったので、初乗車。水戸岡鋭治氏のデザインは独特で、木材を活かした車内は温かみがあり、シートの柄は何種類もあり、どこに座ろうか迷ってしまう。一気に大月まで戻ってもつまらないので途中で下車する予定だ。それで、特別車両の1号車には乗らず、自由席車を選んだのだが、これはこれで快適である。先ほどと同じ線路を戻っているとは思えないほど新鮮だった。車内販売のワゴンもやってきて、短い時間とはいえ鉄道旅行を堪能できる車両だ。

元京王5000系

富士登山電車

 都留文科大学前駅で下車し、富士山駅へ戻る。やってきた電車は、旧京王電鉄5000系で、しかもオリジナル塗装だった。京王線時代とは異なり、クロスシートになっているので旅気分は継続する。三つ峠駅では電車の行き違いがあったが、やってきたのは「富士登山電車」。富士急で最初に登場した水戸岡デザイン車だ。この電車には以前乗ったことがあるので、おとなしく見送る。それにしても、バラエティに富んだ車両ばかりで、富士急の旅は楽しい。

フジサン特急

 富士山駅で下車し、しばしのんびり過ごした後、大月駅へ戻る時に乗ったのは、フジサン特急だ。元小田急「あさぎり」の特急電車だったが、車体にはコミカルな富士山キャラが無数に描かれ、楽しい車両である。それとは裏腹に、車内は落ち着いたいかにも特急の座席と言う感じで、これまた快適だ。

 結局、最後まで車窓に富士山は現われなかったけれど、個性的な車両に幾つも乗れて、半日乗り鉄を楽しめた。土日ではなかったので、遠路はるばる乗り入れてくる成田エクスプレスとは縁がなかった。次回は、成田エクスプレスに乗って富士急を旅したい。何度やってきても飽きない富士急である。

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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