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札幌では飲み会の後に「シメパフェ」をする! いま再注目のパフェの魅力を真剣に考えてみた

現在観測 第35回

 もう一つ、昨今の文化事象との親和性を挙げるなら、双方向性という性質にも着目したい。本来コンテンツの受け手の側だった情報の受信者が、コンテンツに対して影響力を持つようになるというのは、インターネット普及以後、顕著な文化傾向である。たとえばアイドルグループの活動展開を、ファンの人気投票によって決定していくというような事例が分かりやすい。

写真を拡大 赤坂の「デリーモ」では、「オン・ザ・テーブル系」のパフェが楽しめる。パフェ「ダム ブランシュ」は、好きなタイミングでかけられるチョコレートソースが、バニラアイス、チョコチップ入りクリーム、バナナなどと絶妙に絡み合う、人気の逸品。写真提供:斧屋

 これがパフェに一体何の関係があるのかと思われそうだが、パフェにも、受け手(食べ手)の参与性を高めたものが存在する。私が「オーダー系」「オン・ザ・テーブル系」と呼んでいるものだ。前者は、注文の段階で、たとえばアイスの種類などの中身を選択できるタイプのパフェである。後者は、チョコレートソースなど、パフェにかける液体や粉末が別添でついてきて、食べながら好きなタイミングでかけていくというパフェだ。特に後者のタイプが最近増えてきていると感じる。どちらも、パフェがどのようなものになるかは食べ手に委ねられている

 以上をまとめると、パフェはSNSにおける画像としての引きの強さを持つ一方、その場でしか食べられないという時間的・空間的制約がその価値を高めている。また、受け手がパフェの生成に参与することによって、より固有のオリジナルなパフェ体験をすることができるのだ。

◆札幌発「シメパフェ」文化が広まるか

 これからのパフェの文化的な展望を述べておきたい。

 まず、パフェブームが来るのかどうかが気になるところだ。今年は多くの雑誌でパフェ特集が組まれていて、ブームの到来を予感させる。ブームが起きることは一長一短であるが、パフェのすそ野が広がることはパフェ文化にとって好ましいことである。
 スポーツが、競技人口の増加とともにレベルが高くなっていくのと同様、パフェに参入するお店が増え、口にする客が増えるほど、パフェもより多様な広がりと、新たな創造性の発揮へとつながることだろう。
 そのモデルケースとなりそうなのが札幌である。札幌は「シメパフェ」という、夜にパフェを食べる文化があり、パフェは独自の進化を遂げている。お酒の後に、あるいはお酒とともに夜にパフェを食べることによって、パフェに付加価値がついている。パフェの価格設定はかなり強気だと感じたが、深夜でも満席のパフェ専門店もあり、いまのところ成功していると言える。札幌パフェ推進委員会が運営するウェブサイト「札幌シメパフェ」では、札幌市内で「シメパフェ」を楽しめる店舗の紹介がされている。果たして札幌の外へと、シメパフェ文化が広まることがあるのだろうか。

 自分もパフェの魅力を伝える立場の人間として、「パフェは食べ物ではなく、エンターテインメントである」と提唱し、新しいパフェ観を提案している。1500円のパフェがあったとして、それを食べ物だと思うから高いということになる。映画やライブのような娯楽と並べて考えれば、高いことはないのだ。それだけの中身の充実を、パフェは十分に備えているのだから。
 パフェがブームとなることで、また、パフェが既存のイメージを変えていくことによって、より楽しく、よりおいしいものになっていくことを切に願っている。そして、そのブームが一過性のものでなく、文化として成熟していきますように。

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斧屋

おのや

著書『東京パフェ学』(文化出版局)でパフェ文化を考察し、注目を浴びる。パフェのレポートを雑誌やブログなどで発信している。2015年は年間365本のパフェを実食し、今年はそれを上回るペース。twitter(@onoyax)もぜひチェック。


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  • 斧屋
  • 2015.03.20