◆「勝負強さ」は一試合限定の秘策や特別な準備ではない

 この前提の上でシーズンを決するような、終盤戦や決勝など大事な試合について言えることは、不思議なほど、「その年のクラブや自分を象徴するような試合になる」ということです。これはつまり、勝負強くあるためには、一つの試合に対する特別な準備や秘策が隠されているのではなく、そこに至るまでの日々に答えがあるということです。

 僕がそれを知ったのは、2008年の第33節で決勝点を決めたときでした。結果的に連覇をたぐりよせるゴールとなったわけですが、その年、僕は苦しいシーズンを過ごしていました。シーズン前に痛めた足をずっと隠しながらのシーズンとなった僕は、日本代表にも全く呼ばれなくなり、肉体的にも精神的にも我慢のシーズンとなっていました。得点を見ても、32節までに挙げたゴールはわずかに1つで、まさに不本意なシーズンでした。
 連覇を目指すチームの中で、なんとか自らの役割をこなしながら、僕はこの苦しみがどこに繋がるのだろうかと考えて過ごしていました。それはゴールの見えない孤独な戦いでしたが、そこから逃げなければ何か大きなことが待っていると信じ続けていました。

 ゴールの瞬間は今でもスローモーションで思い出すことができます。ゴールに吸い込まれるボール以外の全て、人も時間も音も、その場にあるものは全て止まって見えました。
 気が付いたときには、覆いかぶさる仲間たちの下敷きになっていました。振りほどこうとしても重すぎてびくともしませんでした。あの窒息しそうな重さも、やっとの思いで抜け出した後に見た、サポーターの皆さんがスタジアムごと揺れる光景も、今でもはっきりと思い出すことができます。幸せと言うほかない、圧倒的な景色でした。

 苦しみの先にあった、そのゴールは、僕の勝負強さの解釈を変えてくれました。

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