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1st制覇・鹿島アントラーズに学ぶ
「最後に勝つ」チームだけにある“決定的な力”

「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦

◆勝負強さとは「勝負所を決めない」こと

 僕はそれまで、プロになる前を含めて、優勝が懸かったような大事な試合では、あまり結果を出せずにいました。いつも勝負所と言われる時に何をすればいいのか悩んでいました。しかし、書いたとおり、勝負所とは、その時の自分ではなく、それまでの自分が表れる場面なのです。いや、むしろそれをよりごまかすことができない場面なのかもしれません。
 つまり、大事なことは日々の取り組みであり、どんな毎日を過ごしてきたか。それが勝負強さに繋がるのだと考えるようになりました。
 そもそも、勝負所とは、事前に勝負所と分かるわけではありません。よく試合前に勝負所と周りが騒ぐような試合がありますが、実はそれは違います。本当に勝負を分けたポイントと言うのは、シーズンやその試合が決した後に、後付けで語られるものです。特にリーグ戦においては、諦めなければ何度でもチャンスは訪れてくれるのです。
 だから僕は、勝負強さとは、「勝負所を見極めること」ではなく「勝負所を決めないこと」だと思っています。
 一見、勝負強さと勝負所を決めないことは矛盾するように見えます。勝負所には勝負所の戦い方やメンタリティがあり、そこには特有の“何か”があるはずだと捉えられがちです。

 では――。
 勝者のメンタリティとはどういうメンタリティでしょうか?
 勝者とは、大事な試合とそうではない試合を区別する人でしょうか?

「いつもより大事な試合」があるということは、「いつもより大事ではない試合」があるということです。勝者のメンタリティを備えた選手とは、そうやって自分で勝手に試合に優劣をつけたりはせず、どんな試合も勝つためにプレーできる選手だと思います。だから僕は、勝負強さとはそうしたメンタリティを持ち続け、日々の取り組みをしっかり続けることができたときのご褒美のようなものではないかと思っています。

 鹿島には何があるのか。あの頃の仲間と話すことがあります。

 みんなが口を揃えるのは、鹿島に足を踏み入れたときの空気感です。クラブハウスに行き、グランドに立った時に感じる独特の空気感。それは、勝つことに対して妥協を許さないクラブとして受け継がれてきた、日々のディテールへのこだわりから作られてきました。そこには、一つの負けも、それを招く可能性があるどんな小さなことも許さないという空気があります。
 負けてもいい理由を作るのは簡単です。全てのクラブが勝利を追求する必要もないでしょう。
 ただ僕は、勝ちたいです。そのために小さなことから、一つ一つこだわって、日々を積み重ねていきたいと思っています。

 

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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