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1st制覇・鹿島アントラーズに学ぶ
「最後に勝つ」チームだけにある“決定的な力”

「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦

◆「勝負強さ」は一試合限定の秘策や特別な準備ではない

 この前提の上でシーズンを決するような、終盤戦や決勝など大事な試合について言えることは、不思議なほど、「その年のクラブや自分を象徴するような試合になる」ということです。これはつまり、勝負強くあるためには、一つの試合に対する特別な準備や秘策が隠されているのではなく、そこに至るまでの日々に答えがあるということです。

 僕がそれを知ったのは、2008年の第33節で決勝点を決めたときでした。結果的に連覇をたぐりよせるゴールとなったわけですが、その年、僕は苦しいシーズンを過ごしていました。シーズン前に痛めた足をずっと隠しながらのシーズンとなった僕は、日本代表にも全く呼ばれなくなり、肉体的にも精神的にも我慢のシーズンとなっていました。得点を見ても、32節までに挙げたゴールはわずかに1つで、まさに不本意なシーズンでした。
 連覇を目指すチームの中で、なんとか自らの役割をこなしながら、僕はこの苦しみがどこに繋がるのだろうかと考えて過ごしていました。それはゴールの見えない孤独な戦いでしたが、そこから逃げなければ何か大きなことが待っていると信じ続けていました。

 ゴールの瞬間は今でもスローモーションで思い出すことができます。ゴールに吸い込まれるボール以外の全て、人も時間も音も、その場にあるものは全て止まって見えました。
 気が付いたときには、覆いかぶさる仲間たちの下敷きになっていました。振りほどこうとしても重すぎてびくともしませんでした。あの窒息しそうな重さも、やっとの思いで抜け出した後に見た、サポーターの皆さんがスタジアムごと揺れる光景も、今でもはっきりと思い出すことができます。幸せと言うほかない、圧倒的な景色でした。

 苦しみの先にあった、そのゴールは、僕の勝負強さの解釈を変えてくれました。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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