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「天岩屋戸事件」までの天照大御神の行動

天照大御神が卑弥呼であると言える理由 第8回

日本神話の最高神とされる天照大御神。吉野ヶ里遺跡などのデータを科学的な方法で分析、整理すると「天照大御神=卑弥呼」説が浮かびあってくる――!?その根拠を徹底検証する第8回。

 

「岩戸に隠れる」は
「死」を暗示しているのか?

 天照大御神が、須佐男之命(すさのおのみこと)の乱暴に怒って、天岩屋戸にこもったという神話は、太陽の神とされていた天照大御神(卑弥呼)の死の前後に、深い日食があったので、古代人にとっては、衝撃が大きく、それが、神話化したものであろうとする説がある。

 『万葉集』に、人の死を、「岩戸に隠れる」と表現している歌がある。

 ところで、『古事記』、『日本書紀』に記されている日本の神話を、ていねいに読むと、次のようなことに気がつく。

 それは、「天岩屋戸事件」以前と、そのあとで、神話の中心人物、天照大御神の取り扱い方が、かなりはっきりと異なっているという事実である。

 天岩屋戸の事件以前においては、天照大御神は、どんな場合でも、一人で行動している。須佐之男命との争いにおいても、忌服屋(いみはたや)で衣を織るときも、天岩屋戸にこもるときも、最高の主権的位置をしめる女神として、いわば一人で行動している。このことは、『古事記』でも、『日本書紀』でも変わりがない。

写真を拡大 天岩屋戸事件の全貌を図式化したもの。天岩屋戸とは、日本神話に登場する岩でできた洞窟。天岩戸、天戸ともいう。

 

《天照大御神が卑弥呼であると言える理由 第9回へつづく》

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安本 美典

やすもと びてん

日本史学者。1934年生まれ。京都大学文学部卒業、産業能率大学助教授を経て、前産業能率大学教授に(2004年退職)。「邪馬台国の会」主宰。文学博士。『季刊邪馬台国』責任編集者。主な著書に『邪馬台国への道』(筑摩書房)、『卑弥呼の謎』(講談社)、『「邪馬台国畿内説」を撃破する!』(宝島社)など多数。


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