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暮らしの新常識「これで食品ロスは確実に削減できる!」——真空スキンパック開発の全貌

【THE PIONEER〜開拓者たち〜】

■私たちの誤解「赤い肉は酸化しており新鮮でなかった!」

真空スキンパックを開封し、数十分が経過した牛肉。青丸部分に注目して欲しい。空気に触れ酸化した部位は鮮やかな赤色に変色した。これは酸化により鮮度が落ちたことを意味する。

 

 常識を変えることはなかなか難しい。常識は時に科学的根拠とは別の思い込みでまかり通るからだ。精肉コーナーでは白いトレーに鮮やかな赤いお肉が包装されているものが当たり前の日常風景としてインプットされている。だが、それが酸化され、バクテリアが増殖されている状態だと知ったら、それでも私たちの購買動機は変化しないのだろうか。

「例えば、新鮮な牛肉の色と聞いて、何色を連想しますか? 牛肉は本来、赤紫色をしているのですが、それが酸化すると鮮やかな赤色に変わるのです。さらに、酸化が進めば、茶褐色になります」(秦会長)

 ということは、私たちは酸化が進んだお肉を好んで購買し、食べているのだろうか。下の写真をよく見て欲しい。サシが入った右側の部分は特に鮮やかな赤の発色をしている。これはまさに酸化によるものなのか。

「その通りです。鮮やかな赤色の肉は酸化しているということが欧米ではよく知られていますが、日本では知られていないばかりか、誤解しているところがあります。鮮魚ではマグロなども同じなのです」(秦会長)

 新鮮な色とは赤紫色。これは色素タンパク質のミオグロビンの本来の色であるが、空気に触れ、酸化されることでオキシミオグロビンに変化し、鮮やかな赤色に変色する——これをグルーミングと呼ぶが、私たちはこの事実を知らされていない。さらに酸化が進めば、メトミオグロビンに変化し茶褐色に変わる。ここまでくると、鮮度は劣化し、バクテリアの増殖は抑えられない。

「お肉は、消費者の口から摂取されるものです。見た目と先入観に目を奪われて健康と安心を損ねるものだとしたら、それは生産者にとっても消費者にとっても良くないと危機意識を感じています。しかし真空スキンパックの技術で包装されたお肉は、空気を遮断して密閉できますので、肉本来の赤紫色のまま、より安全、安心、長持ちを実現できたのです」(秦会長)

 私たち消費者の常識を変えるだけで、食品の可能性が広がると同時により安全性も高まることにつながるのである。常識の変革によって日本で「包装革命」ともいえる時代の変革、その足音が次第に聞こえてくるようだ。

新鮮な牛肉とは、このように深い赤紫色をしている。この色こそ鮮度が高いという常識に換えていかねばならない。

 

 

■日本の強みを世界に発信——消費者の生活「豊かさ」革命

 この真空スキンパックによって、私たちの暮らしはどのように変わるのだろうか。ざっとおさらいしてみよう。
 まず(1)食品ロス削減、(2)食品ロスにともなう温暖化ガス削減による地球環境への貢献、(3)生産者の計画的な供給サイクルの実現、(4)消費者の長期保存可能による食卓の自由度の拡大など枚挙にいとまがないが、さらにマクロ的視点では日本の成長戦略の一端を担う可能性があるかもしれない。 

 というのも、日本の畜肉はこの8年右肩上がりで増えているばかりか、特に神戸牛をはじめとする「和牛」はいまや世界で嗜まれるほど「ブランド牛」として高付加価値をもつ重要な輸出産品ともなっている。

「現在、お肉は冷凍による輸送が主流ですが、氷結晶防止など技術も高まり以前と比較すると格段に美味しさを実現できていますが、やはり冷凍焼け(酸化と乾燥)は否めないところがあります。ですが、例えば真空スキンパックによって長期保存が可能となれば、冷凍せずとも輸出ができるようになると思います。特にヨーロッパでは熟成肉を好んで食する文化があります。長期保存のメリットにより、和牛のチルド輸出が可能となるかもしれませんね」(秦会長)

 少子高齢化により日本の人口は、2050年には3000万人も減少し、1億人を割る(9500万人)見込みだが、それに反して世界の人口は約20億増加(97億人)する見込みだ。
 いまこそ、内需減少を埋め合わせる外需拡大への転換期と捉え、攻めの成長戦略としての日本の安全で美味しい農産物や食品(加工品を含む)の輸出に活路を見出せる時かもしれない。またこの成長戦略の技術として真空スキンパックがその一翼を担うかもしれないのだ。

「食を通じて世界の人々を豊かに幸せにできることが、私たちにとって喜ばしいことです」(秦会長)

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