【不死身(ふじみ)】フィジカルとメンタルでも屈強! ちゃぶ台返し、大地震、核戦争でも壊れないものってなんだ!?《マンガ&随筆「異種」ワンテーマ格闘コラム》Vol.22 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【不死身(ふじみ)】フィジカルとメンタルでも屈強! ちゃぶ台返し、大地震、核戦争でも壊れないものってなんだ!?《マンガ&随筆「異種」ワンテーマ格闘コラム》Vol.22

【連載マンガvsコラム】期待しないでいいですか?Vol.22

◼︎妹・吉田潮は【不死身】をどうコラムに書いたのか⁉️

 不死身

 全国各地には「富士見」という地名や坂がある。結構な数である。たとえ富士山が見えなくても富士見。富士山が見えるのは縁起がいいという象徴からか、山岳信仰の一種なのか。そういえば、私の出身大学も千代田区富士見にあった。確か屋上から富士山が見えた記憶がうっすらあるのだが、細かくは覚えていない。屋上は酒を飲む場所だったから。大学の屋上で飲酒できた時代が懐かしいよ。まだ中核派の皆さん(残党)が描いたゲバ字の立看板が校内にあった時代だ。今は、校舎が異様な超高層タワーとなったらしいので、上層階から確実に富士山が見えるはず。

 おっと、お題は富士見じゃなくて不死身だぞ。でも、「富士見=不死身」という語呂もあって、長らく信仰されてきたのではないかと思ったのだ。日本人は語呂合わせとかダジャレが大好きだから。今思えば「相当のこじつけですね」と思うモノも、文化や伝統として根付いたりする。正月のおせち料理や結納品なんかその最たるもの。めでたい、よろこぶならまだいいけれど、まめまめしく働けだの、子供をたくさん産めだの、じんわり強要してくる料理もあるからな。結納なんか、鰹節にするめ、昆布に、明らかに性差別的な意味合いを込めてあるからな。

 ま、そんな語呂合わせとダジャレを信奉する国においては、「霊験あらたかな富士山」に「不死身でありたい願望」を掛け合わせたら最強ではないか。

 でも、ふと思う。

  「え、みんな、そんなに不死身になりたいのか?」

 人はいつか死ぬ。私自身、不死身になりたいと考えたことはなかった。いつか「もうそろそろいいかな」という頃合いで、適当に死にたいと思っていた。なので、「不死身になってどうすんのよ、自分だけ死なないなんて寂しいわよ?」なんて思っていたのだ、ついさっきまで。大きな勘違いに気づくまでは。

 不死身には大きく分けて二つの意味がある。フィジカルな意味とメンタルの意味だ。

 まず、フィジカルなほうは文字通り、屈強な体のこと。広辞苑によれば、「打たれても傷つけられても痛まず弱らないという異常に強い身体」だそう。つまり、「死なない」とはひと言も言ってないのだ! 絶対に死なない体ではなく、普通の人なら死ぬようなダメージを受けても痛くないし、弱らないという。そこがポイントだ。おそらく「外傷にめっちゃ強い」という意味である。それだったらぜひとも欲しい。つい先日、七転八倒の猛烈な痛みを体験したばかりなので……。

 16年近く通っている、なじみの歯科医院で、歯の治療後にK院長から言われた。

 「歯茎の色素沈着、気にならない?」

 確かに私の歯茎はどす黒い。もともと全身の色素が濃くて、体の外表面でピンク色の部分がほとんどない。歯茎は内側の粘膜だし、そこくらいはピンクでしょ、と思ったら大間違い。長年の喫煙のおかげで歯茎までみっしり黒いのだ。
K院長いわく、最新のレーザーも入荷したし、色素沈着はレーザーで割と簡単にとれるとのこと。「歯茎ピーリング」は聞いたことがあったし、仕組みもわかる。再生に1か月かかる皮膚の細胞と比べて、粘膜の細胞は生まれ変わりが早い。数日くらいならば、多少のダメージでも大丈夫だろうと。しかも外側の歯茎なので、飲食にはあまり支障をきたさないだろうと。

  別に、歯茎が黒くてもなんの支障もなかったのだが、面と向かって言われたら気になる。さらに拍車をかけたのは、私自身が今、絶賛キャンペーン中だから。
「50歳になるまでに、今までやったことのないことを体験する」キャンペーンな。

 歯茎レーザーは未体験なので、「いっちょやってみっか」と。

 もちろん保険診療ではない。上下で6万円(レーザー2回分で)。お高いけれど、やってみる価値はある。40代のうちに「こんなの初めて……♡」をいくつ体験できるか、自分に課しているので、意気揚々挑んでみたわけだ。

 施術自体はがっつり麻酔をかけて行うので、痛みはない。ただ、粘膜を焼く香ばしいウェルダン臭はすごかった。処方箋で消毒薬をもらい、上下歯茎が焼け焦げた状態で帰宅。「ま、こんなもんか」なんて思っていたら……。30分ほどして麻酔が切れてきたとき、阿鼻叫喚の地獄が始まった。もう激痛どころじゃない。顔がもげるほどの痛み。正直、こんな痛みは想定外だった。慌てて鎮痛剤を飲むも、口内から顔全体、そして頭蓋内へ広がる猛烈な痛みが数時間続いた。あのときの私の顔は、「全日本めっちゃ情けない顔コンテスト」でグランプリを獲る自信がある。

 2日目には歯茎の粘膜がややむくんだように赤黒く腫れ、3日目にはようやく口の中が落ち着いた。痛みもおさまった。そして、歯茎は部分的に見たことのないようなピンク色に生まれ変わっていたのだ!

 K院長からは「2回目のレーザーは落としきれなかった部分に、再度レーザーを低出力で当てる」と聞いていた。もう1回当てれば、まだらな部分もなくなり、さらにきれいなピンク色の歯茎になる。そうわかっていても、やはりあの痛みを経験すると、2回目にはどうしても踏み切れず。「いやあのもうホントこれで満足してるんです……あ、でも症例写真はぜひ使ってください」と伝えて帰ってきたのだった。

 そうそう、不死身のもう一つの意味、メンタルのほうは「いかなる困難にあっても、気力のくじけないさま」である。まあ、「不屈」に近い意味ね。いや、くじけたわ。あの痛みにはくじけるわ。涙ちょちょぎれたわ。フィジカルでもメンタルでも不死身にはなれなかったよ……。

 ということで、不死身になりたい願望を馬鹿にしてすみませんでした。私も、今後は不死身になりたいです! 不死身になりたいという気持ちを前面に出していこうと思います!

 でも、また、ふと思う。不死身って「外傷に強い体と困難にくじけない心をもつ」けれど、案外感染症には弱そうだなぁと。どう見ても弱そうなルックスなので、馬鹿にしていたけれど、あいつに頼るしかないか。アマビエに。

 

 (連載コラム&漫画「期待しないでいいですか?」次回は来月中頃です)

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毎月14、15日頃連載コラムvsマンガ「期待しないでいいですか?」

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吉田 潮

よしだ うしお

コラムニスト

1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。ライター兼絵描き。



法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』、『Live News it!』(ともにフジテレビ)のコメンテーターなどもたまに務める。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より『東京新聞』放送芸能欄のコラム「風向計」を連載中。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』(KKベストセラーズ)、『くさらない イケメン図鑑』(河出書房新社)ほか多数。本書でも登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。



公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/



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