■歯科衛生士の厳しい環境

 中には、非常にレベルの高い技術を持った歯科衛生士もいる。だが、そうした歯科衛生士に当たる確率はそれほど高くはない。十分な経験を積む前に退職してしまう歯科衛生士が少なくないからだ。

 国家資格を持つ専門職でありながら、歯科衛生士が働き続けられる環境が整っていないのだ。結婚や出産を機に辞めてしまうケースが非常に多い。本来は産休や育休が与えられるべきなのに、請求しにくい空気がある。歯科医院の側も、歯科衛生士が出産で休みを取ると、別の歯科衛生士を雇い入れなければならない。そして、出産した歯科衛生士が職場に戻ろうとすると、すでにそのポジションがなくなっているのだ。その結果、多くの歯科衛生士が仕事への情熱を失っていくのである。

「私が歯科衛生士を雇わないのは過去のトラウマがあるからですが、もうひとつは本当にいい人が来てくれるかどうかがわからない点も大きい。正直に言えば、技術もあって人柄も申し分ない歯科衛生士なら来てもらいたいと考えたこともあるのです。しかし、いまの現状では宝くじにあたるようなもので、ほとんど期待できない。全部、自分でやったほうが気持ちが楽だし、患者さんともしっかり向き合えると思ったのです」

 こう振り返る斎藤歯科医師。「戦時下だからこそ、責任の所在だけははっきりさせておかなければならない」と締めくくった。