◆嬉しくて胸が詰まる「幸せ」の苦しみ

陽の場所が変わり、初めての面会。
陽の居場所を見つけることは容易だった。

そして確かに、みんなに見えてしまう場所。
授乳後に体重を測る台の、すぐ隣なのだから。
しかし機械や処置道具が多いため、その場所でないとスペースが確保できないことも、
すぐに理解できた。
少しでも見えないようにと、パーテーションが置いてあり、先生方の配慮(はいりょ)も伝わった。

陽、ここからがスタートだね。

病院を出たら、もっとたくさんの人がいるよ。いろんな人で溢れているよ。

私たちが、守るよ。

そして、また面会が続き、
そんなある日のこと、無菌カプセルからも出られるようになった。
更に、陽は白い布をまとっていた。
完全滅菌された、白い肌着、布切れ1枚の偉力は凄まじいものだった。

「陽、すごいねー!」

「服着られたんだねー!!」

本当に本当に嬉しい。
鼓動が高鳴る。
服が着られたということは、抱っこができるから、そう言われていたから、嬉しくてたまらない。

先生方の「抱っこしますか?」という問いに、

「・・・はい」と静かに答えた。

いざとなると不安が押し寄せ、全身ベタベタにワセリンを塗り、肌全体にバリアをつくってあるから大丈夫だと言われても、擦れて痛くないのかと心配になった。
着々と抱っこの準備は進み、何枚もエプロンを着て、
私の見えている肌の部分は、目元だけの状態。

「そこに座って待って下さい」そう言われ待つと、

バスタオルで包まれた陽を、看護師さんが優しく抱っこして、近付いてきた。

胸が苦しい。
でもこの苦しさは、今までの辛く悲しい苦しさとは違う。
嬉しくて胸が詰まる、
幸せの苦しみ。

初めての抱っこに、緊張しつつ、私はそっと我が子に手を伸ばした。
やっとやっと、我が子をこの胸に抱くことができる。

陽、おいで。
『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)