なぜ「富める者はますます富む」のか?【令和の億り人が静かに教える】若者にこそ知ってほしい「資本主義」のしくみ③ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

なぜ「富める者はますます富む」のか?【令和の億り人が静かに教える】若者にこそ知ってほしい「資本主義」のしくみ③

◆「会社よりも家族」台湾人のブレない価値観

 私が一昨年まで12年間を経営者として過ごした台湾の人々は、この現実を経験則として知っています。だからこそ、皆が真剣に投資に向かいあっています。趣味の集まりであれ、親戚の集まりであれ、話題の定番はいつも「投資」です。「日本で不動産を買うにはどうすれば良い?」「今度一緒にこんな事業をやってみない?」そんな話題が普通に交わされています。日本の証券取引所の売買代金における個人投資家の比率はおおよそ20~30%程度、一方台湾の証券取引所における個人投資家のシェアは昨年9月末の数字で57.8%!【注釈(*4)参照】 
 私にはこの数字がそのまま、両国の投資リテラシーの高低を示しているように思われます。

 一方、台湾で日本人駐在員が集まる居酒屋に行くと、至る所で「台湾人は働かない」という愚痴が聞こえてきます。「トラブルがあっても上司を残して自分だけ帰ってしまう」「残業を嫌がる」「責任感が足りない」等々。私は台湾生活が長かったものですから、たびたび「台湾人をうまく使うにはどうすれば良いか?」という趣旨の相談を日系企業の駐在員の方々から受ける機会がありました。私はいつも同じアドバイスをしました。「会社のためなら盲目的に何でもするという、私たち日本人の考え方を見直すべきだと思います」と。

 彼らは、「仕事よりも家族」という価値観が共有されています。「昇給につながらないような残業で家族を犠牲にする」なんて彼らにはありえないことなのです。一方、家族のためになることなら、目の色を変えて頑張ってくれます。自らの職務内容が明確で、仕事の成果が昇給につながることが信頼できる場合、台湾の人々は驚くほどよく働きます。私たちの会社でも、従業員のモチベーションに頭を悩ませていた時期がありました。しかし一人ひとりの職務内容を文書化した上で評価制度を厳密にし、それまで年に一度しかなかった昇給のチャンスを、アルバイトは月に一度、副店長以下の店舗スタッフは半年ごとに行ったところ、飛躍的なモチベーションの向上が実現できました。

 かつて私たちの会社が増資を行った際、従業員向けの増資枠を設けて出資を募ったところ、想像を超える金額が集まりました。年収を超える金額の出資を引き受けてくれたある若手社員に「これだけの大金、どうしたの?」と質問したら、「両親や親戚が貸してくれました」とのこと。会社の将来が有望であると信頼してくれれば、従業員本人だけでなく、一族皆でお金を集めて会社に協力してくれるのです。国も会社も信頼せずに、家族親戚協力して一族の生き残りに一所懸命。それが台湾だけでなく、東南アジアやアメリカ等世界中で活躍する中華系の人々の強さの秘訣だと思います。

◆私は資本主義者ではない

 最後に一言申し添えたいと思います。連載第2回、第3回と資本主義について話をしてきました。誤解を招いているかもしれませんが、私は資本主義を信奉しているわけではありません。今よりも、人々がより平等で、お金に縛られない社会が理想です。人間はお金のためではなく、社会のため、自らの理想のために人生を生きるべきだと思います。資本主義が生み出す格差を是正するために、残りの人生で何らかの貢献が出来れば、とも考えています。
 しかし、資本主義社会は現実です。現実からは逃げられません。だからこそ資本主義社会のルールと向かいあい、学んできました。若者の皆さんが、この現実に向かいあい、これからの長い人生をより豊かなものにしてくださることを応援したいと思います。次回は「投資」について語っていきたいと思います。(つづく)

【注釈】
(*4)「台湾証券取引所HP日本語版」https://www.twse.com.tw/jp/page/about/company/guide.html
より引用

 

KEYWORDS:

オススメ記事

鈴木 烈

すずき れつ

1973年生まれ、47歳。早稲田大学法学部卒業。八千代投資株式会社代表。台湾および中国で約50店舗(2018年離職当時)のレストランを運営する、乾杯股份有限公司の元CEO。在職12年で売上と利益を約20倍に増やし、2016年にはCEOとして台湾の新興企業市場で店頭公開を達成。その後2019年に帰国。現在は、前職で得た資金と人脈で投資業を営む。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程在籍。

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

21世紀の資本
21世紀の資本
  • トマ・ピケティ
  • 2014.12.06