「ちゃんと産んであげられなくてごめんね」若き母が難病「魚鱗癬」で苦しむ我が子との面会で現実と向き合った瞬間 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「ちゃんと産んであげられなくてごめんね」若き母が難病「魚鱗癬」で苦しむ我が子との面会で現実と向き合った瞬間

難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(10)

◆ちゃんと産んであげられなくて「ごめんね」

NICUのドアが開く。
一歩踏み入れると、やはり昨日とは別世界。
よく見える。
陽がいるのはNICUの一番奥、その道のりが長い。
通り道には、可愛い小さな赤ちゃんがいっぱい。
ママに抱っこされたり、手を握られていたり、ミルクを飲んでいたり。
可愛い。
みんなみんな可愛い。普通の赤ちゃんだ。小さいだけだ。

コンタクトレンズをつけた私の目は、視界はクリアに見えていたけれど、大切なことは何一つみえていなかった。
小さいだけで、なんの問題もない。なんて、絶対の保証はない。
大なり小なり、運命と戦ってる赤ちゃんや、そのご家族もその場にいたはずだ。

でも、この時の私には、どの赤ちゃんも、ただ小さいだけ。
どうしてうちの子は・・・。
赤ちゃんとは、程遠い姿をしているのだろうか。

周りの赤ちゃんを見るたび、その想いが強くなっていき、そのまま陽の前に着く。

ドアを開ける前までの決意なんて、もうどこにもない。
掛ける言葉もない。
名前も呼んであげられない。
人前で泣くことが大嫌いな私が、大粒の涙を堂々と流し、声を押し殺すことに必死だった。

ごめんね
ごめんね
ちゃんと産んであげられなくて ごめんね
痛いね 辛いね 苦しいね
全部私のせいだね
ごめんね

心の中でこの言葉たちを何度も繰り返し、泣いた。
そして母親として最低な言葉を、心の中で、陽に話していた。

今、その瞬間に戻って、その時の私に会えるのなら、ひっぱたいてやりたい。
痛々しい姿でありながら、たくさんの管につながれ、生きようと頑張っている我が子に、私は心の中でこう話しかけた。

「もう、頑張らなくていいよ」

『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)

KEYWORDS:

産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母

 

 

本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。

「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」

このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。

陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。

また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。

障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。

◆ピエロの母のアメブロ「産まれてすぐピエロと呼ばれた息子」

ピエロの母

50~100万人に1人の割合で生まれてくると言われる「道化師様魚鱗癬」という難病を患った長男を出産。出産から現在に至るまでの闘病を記したブログは反響を呼び、Amebaブログではすでに3000人以上のフォロワー数がおり、また同ブログのハッシュタグ記事ランキングの『#難病』部門では、トップランキング入りすることも多数ある。1987年生まれのO型。関西某県の田んぼと山が見渡せる長閑な田舎暮らし。元保育士で現在は専業主婦。


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  • 2019.11.09