我が子の誕生の瞬間、こんなに幸せであるべき日に、なぜ、私は泣いているのか! 「ピエロ?」「ウロコ?」なぜ、私は自分の息子を難病「道化師様魚鱗癬」を患わせて産んでしまったのか?  生まれながらにして生きる障害を与えるなんて神様はいないのか? 若き母の産んだ苦しみが生まれた子の苦しみになると思った時の思い、その瞬間を『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』の著者「ピエロの母」が克明に綴った。
 

◆おめでとうと言われた日

手術台の上。不安と、もうすぐ息子に会える喜びで、心拍があがる。
そんな中、お腹を切る先生の声が響く。
「えっ」
「あれっちょっと」

何?
「えっ」て何 ?  
「あれっ」て何が ?  
ちょっとって、一体何なの?
そう思った瞬間、お腹がスッと軽くなったと同時に、
「にゃ〜」
「ふにゃ〜」

まるで仔猫のような、か細い、愛しい息子の声が聞こえた。

よかった、生きてる。
でもその二回の泣き声で終わり、手術室は焦った声が飛び交う。
お腹から処置台に移動する、小さい小さい息子は、先生方に囲まれてハッキリと見ることができない。
それでも隙間から見ようとする。
見えた!  え ? 見えた ?  
あれは・・・なんだ ?   私は、何を産んだの?
・・・人じゃない。

訳がわからない。
どうなってるの。

誰か教えて。
誰か助けて。
私の息子は、大丈夫なの?

呼吸確保の処置が終わり、すぐに無菌カプセルに入れられ、私の近くにきた。
「おめでとうございます」と先生は言った。私は
「ありがとうございます」と言うしかなかった。
そして
「この子は大丈夫なんでしょうか」と尋ねると、
「なんともいえません」の一言。
今からすぐ集中治療室(NICU)へ移動するとのこと。

あっ、手術室の前には、夫と私の母が楽しみにして待っている。
大丈夫かな、倒れないかな。
そう考えているうちに、パチッパチンッと開いたお腹を、ホッチキスで塞ぐ音が聞こえ、帝王切開は無事に終了。

手術室から出ると、案の定、真っ青な顔の夫。
私を心配そうに見つめる母。
そして、なぜか強がり笑顔の私。

部屋に戻り、睡魔、身体の震え、発熱、痛みに耐えながら私は眠りについた。

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