コンスタントに企画を生み出すコツとは?【角田陽一郎×加藤昌治】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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コンスタントに企画を生み出すコツとは?【角田陽一郎×加藤昌治】

「お悩み"あんちょこ"相談会 」第1回

■「初出し」を敢えて避ける

 

加藤:元々の質問に戻ると、この質問者の方は「週一のレギュラー番組」になるわけだよね。テレビのレギュラー番組の場合にも「面白い回」と「普通の回」があるという話をしていたけど(『仕事人生あんちょこ辞典』「私」の項目を参照)、その比率ってどれくらいなのかな?

 この質問者の方は、「ずっと続けるためには毎週ドッカンドッカンとウケないといけないんですか?」ということも訊きたいんだと思う。レギュラー番組を続けるにあたって必要となるクオリティの幅、と言い換えてもいいね。

角田:やっぱり、つまらないものが続くと存続がヤバいから、キラーコンテンツみたいなものは「何ヶ月に一回か出さないとマズいよな」とは思ってるんだけど、実際のところ、キラーコンテンツなんてそうそう無いよね。

 『金スマ』でやっていたことで言うと、普通、あらゆる番組って「初出し」を喜ぶんだよ。

加藤:「初出し」ってなんですか?

角田:「いままでメディアに出てこなかったあの人が、テレビ初登場」みたいなこと。

加藤:ああ、なるほど。「初物」だ。

角田:そう。「初物だと数字(視聴率)がとれる」と思ってるから、普通の番組は、その時に話題の人を初物で出そうとするんだよ。

 例えば、麒麟の田村(裕)さんの『ホームレス中学生』がヒットしたじゃないですか。あの時も「田村さんをどこの番組が初出しするか」をテレビ局は競うわけだよ。

 でも「そこで勝負すると負けちゃうな」と思ってたから、『金スマ』ではやらないんだよ。それじゃあどうするかというと、むしろ初物に触らないことにしていた。そういうのは『おしゃれイズム』(日本テレビ系列)みたいな他局のトーク番組でやってもらおうと。

 というのも、例えば「田村さんの『ホームレス中学生』が売れている」と言っても、本を読む人口ってそんなに多くないし、テレビを見ている人みんながその話題を知っているわけでもないでしょう。

 だから、わざと3ヶ月から半年待って「みんなが知っている」状態になった後に、「『ホームレス中学生』の、これまで隠されていた過去とは!?」「金スマで〈完全版〉をお送りします」みたいな切り口で取り上げるみたいなことをしていました。

 
 

■世間と自分とをどう接続するか

 

加藤:なるほどねえ。今の話で言うと、質問者はメーカーの方だから、競合他社の商品をそのまま取り上げるのは多分六つかしいじゃないですか。なんだけど、合気道じゃないけど、競合他社の商品の状況を踏まえて、みたいなのがあるってことかな?

角田:それで言うと、今あるメーカーのコンサルをやってるんだ。その会社の商品でTwitterアカウントの運用をやっているんだけど、全然バズってないんだよ。

 なぜかというと、「商品の紹介」だけをやってるの。本当にいい商品なんだけど、アカウントで商品の紹介しかないと退屈じゃん。だからあまりリツイートやフォローされないわけです。

 そこで僕が言った案は、例えば「(当時の)SMAP5人に対して、自分達の商品のうちどれをオススメするか」をTwitterに投稿しようというものなんです。

 赤・青・黄と色のバリエーションがあったとしたら、「木村拓哉さんには青がオススメ。~~」「中居正広さんには赤~~」みたいなことを投稿したら、SMAPファンはその投稿を読むよね。それで彼らの肖像権を侵害しているわけでもない。

 この応用は何にでも利いて、サッカーの日本代表が勝ったときには、じゃあ「サッカー日本代表の○○さんに合ううちの商品はこれだと思います」とつぶやくだけで「いいね」数が増えると思う。

 これを、質問者の方の悩みに当てはめると、「世間と自社の商品をどう接続するか」で企画を考えるということだよね。自分のところの商品だけで企画を作るとネタが尽きちゃうんで、それと「いま世間で流行っているもの」との掛け算をする。

 番組作りでは、そんなことばっか考えてるよね。スイーツが流行っているなら、「スイーツをうちの番組ならどの切り口で取り上げるか」とか。

加藤:今回の質問者の方は週一という話だけど、コンテンツをレギュラーで続けていく上でテレビ番組の作り方を参考にできることって、他にもある? 例えば「○○という番組のこの方法を使ってみたら」みたいな。

角田:それなら、新聞の「ラテ欄(ラジオ・テレビ欄)」ってあるじゃないですか。あの番組表を会議ではずっと見てた。番組名の隣に視聴率が書いてあるわけよ。

加藤:プロ用だね。

角田:それを「日報」って言うんだけど、会議前にそれを配って、みんな見てるのね。視聴率が良かった番組名を赤く塗ったりしたりして。

 それを見ると、「あ、いまマツコ・デラックスさんって本当に人気なんだね」とかって分かるわけじゃない。そうすると「うちの番組ではマツコさんで何をやろうか」「うちの番組にはマツコさんは出れないから、それならオネエキャラの新しい人を発掘しようか」みたいなことを考えはじめるわけだよ。

 つまり、流行ってるものからどう敷衍(ふえん)して企画を作っていこうか考える時には、「一個をパクる」だとなかなか難しいんだよ。

 だから、なんとなくマップ的に「今世間では何が来てるのか」を掴むためにテレビ欄を使ってた、いい意味で言うとね。悪い意味で言うと、「テレビで流行ってるもの、何?」になっちゃうわけだから、テレビがどんどん袋小路に入っている、タコつぼ化している問題点でもあると思うけどね。

 

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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