【注目の岩田健太郎教授が分析】毎年のインフルエンザ「なぜ」流行するのか? 感染症対策は「なぜ(Why)」という問いからはじまる | BEST TiMESコラム

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【注目の岩田健太郎教授が分析】毎年のインフルエンザ「なぜ」流行するのか? 感染症対策は「なぜ(Why)」という問いからはじまる

インフルエンザ なぜ毎年流行するのか①

——新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、発生源の中国だけではなく、日本でも感染者が日々増え続け、その影響はもはや世界規模にも及んでいる。
 冬は、毎年のように“新型”だ、“感染病”だと病気が流行しやすい季節であるように見える。では、毎年「なぜ」インフルエンザが流行するのだろうか? この「なぜ」にどう答えるか!
 感染症診療の第一人者であり、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎氏の著書『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(KKベストセラーズ)から、私たちの感染症への不安を知性で的確に解決する対策をみつけていくことにする。まずはその議論の前提、冷静に「なぜ」という問いを正確に立て、感染症と理性で向き合うことからはじめる。

◆「なぜ(Why)」という問いに答える

 冬の風物詩、インフルエンザ。毎年これが流行するために冬の外来待合室は患者でいっぱいになります。インフルエンザがなくても冬の外来が病人で忙しいのは事実です。冬はいろんな病気になりやすいですからね。しかし、インフルエンザがなければ、こんなに外来が忙しく混み合うこともないでしょうに。

 ときに、質問。インフルエンザってどうして毎年流行するのでしょう。そりゃ、年によって流行の度合いは違いますよ。でも、必ず流行する。まったくやってこないという年はない。そもそも夏はウイルス、どこでどうしてるんだ?

 なぜ、インフルエンザは流行するのか。この「なぜ」という質問は、我々の質問の中で一番高級な質問です。5W1Hとかいいますが、その中でもWhy、「なぜ」に踏み込むのが最も価値が高い質問行為なんです。

 なぜかというと、「なぜ」は一番答えが出しにくいからです。

 例えば、ある人物が自殺したとしましょう。詳細な捜査により、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」やったのか、は比較的突き止めやすいことでしょう。Aさんが、昨日、自宅で、首をつって死んだ……みたいな感じです。

 が、「なぜ」そんなことをしたのか。それは簡単には分かりません。もしかしたら、Aさんは遺書を残していたりするかもしれません。しかし、その遺書に本心が記されているという保証はどこにもありません。例えば、「世界に絶望した」みたいなことが書いてあっても、実は彼女にフラれたのが本当の自殺の理由かもしれないじゃないですか。世間体を考え、彼女にフラれたくらいで死ぬような男に見られたくなくて、「世界に絶望した」なんて格好いいことを言っているだけなのかもしれません。いや、彼女にフラれたのも本当は「きっかけ」に過ぎず、本当の本当はもっと違う理由だったのかもしれません。本人ですら気づいていないような理由で……。

 とまあ、こんなわけで、「なぜ(Why)」の質問の答えはなかなか正確には得難いのです。その得難さは他のwho, when, where, what, how とは比べ物にならないくらいの難易度です。

 医学の世界でもそうです。いつ、どこで、だれに、何という病気が、どのように起きたのかを記載するのはそれほど難しいことではありません。難しいのは「なぜ」そういう病気が起きたか、なのです。

 話を戻しましょう。インフルエンザはなぜ冬に毎年流行するのか。言い換えるならば、なぜ夏には流行しないのか。

 これはですね、インフルエンザ・ウイルスは寒くて乾燥しているところで元気になりやすいのです。だから、冬に流行しやすい。

 もっとも、ウイルスの性格だけで流行が決まるわけでもないようです。例えば、冬は寒いので人が屋外に出にくい。密閉した建物の中に閉じこもりやすいのでインフルエンザ・ウイルスが室内で人から人に伝播しやすい、という要素もあるようです。

 また、冬には日光にあまり当たれません。日光がないと体内でビタミンDが作れません。ビタミンDは免疫力に寄与していますから、冬には免疫が弱ってインフルエンザにかかりやすい、こういう理由も関与しているようです。

 要するに、いろんな理由が複合的に絡み合って、冬にインフルエンザは流行しやすいのです。
『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』より構成)

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岩田健太郎先生YouTubeチャンネル

著者/ 岩田健太郎

本屋さんの「健康本」コーナーに行くと、たくさんの健康になる本とか、病気にならない本とか、長生きする本とか、若返る本とか、痩せる本とかが売っています。ところが、そのほとんどがインチキだったり、ミスリーディングだったり、センセーショナルなだけだったり。要するに「ちゃんとした」本がとても少ないのです。そういうわけで、感染症や健康について、妥当性の高い情報を提供しようと、本書をしたためました。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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  • 岩田健太郎
  • 2018.11.09