日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。
 

 この時期は、インフルエンザなどの感染症が流行る時期である。COVID-19という新型のウイルスも発生した。これまで、病気から身を守るために世界中で様々な取り組みがなされてきた。これからも病気から身を守ることは永遠の課題である。

 ところで、病気には、何と言っても大事なのが薬である。昔から様々な薬が開発され、病気から体を守ってきた。かの有名な戦国武将である武田信玄も病気には特に注意を払っていた。

 戦国時代、殿が死亡したとか病気になったことが敵に知れれば、その時とばかりに相手軍から攻められる。真実かどうかは不明であるが、信玄も世継ぎである勝頼が幼かったためか、「自分が死んだら3年間は死体を諏訪湖に沈め、死を世に出すな。」と言ったとも伝えられている。

 それほどまでに用心深い信玄も、晩年は病気で常に腰に薬袋を携えて生活していた。ある時、側近の前でその薬袋を落としてしまい、信玄は自分が病気であることを知られてしまうと慌てた。そこで、薬を飲んでいる事実が知れ渡らないように、その側近にある名字を与えて口封じをした。その名字が「薬袋(みない)」である。言い伝えでは、信玄が「今の薬袋は見なかったことにしてくれ。お礼に薬袋を名字として与える。」と言って薬袋(みない)という名字を賜ったと伝えられている。

 つまり、薬袋は見ない「ミナイ」としたようである。今でも、山梨県には薬袋という名字が存在している。現在では、名字にマッチした薬袋医師もいる。日本の医学は江戸時代からなので医学に関係する名字は少なく、救護(きゅうご)や小児(しょうに)などが名字として存在している。